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朝霧先生(ry  49話 登校地獄でgdgd。その九。

一体、何がどうなったら、こうなるのでしょうか?

「ル・ラーダ・フォルオル」
「マホカンタ」
「フェルエリア・フォン・エターナリティ」
「ぬわー」

朝霧先生が何かを言えば、女性はそれに答える。このやり取りにどの様な意味があると言うのだろうか? 恐らくは初対面の筈なのに、何故か二人は意気投合してご覧の有様である。

「↑X↓BLYRA」
「カカロット」
「弾けて」
「混ざる?」

一通りこなして満足したんでしょうか? お互いに手を出し、握手を交わして微笑み合っている。何故か朝霧先生の頬が赤くなっていますが。
女性……と言いますか、少女? 着物を着ているので少し大人びて見える。それが無ければ私達と同年代の少女にも見えてしまう。例外と言えば、その大きな胸。3-Aにも同じ位の大きさの胸を持つ方が居ますが、彼女の場合その小柄な身体が、より胸を大きく見せている。朝霧先生の視線もぶっちゃけてしまうと、彼女の顔と胸を言ったり来たりしている、節操のない事で。

「ウチの馬鹿が迷惑を掛けてすまない。この馬鹿が受けた依頼は、とっくに断っていたはずなんだが……私が居ない間に依頼を受理してしまったらしい」
「そうなのかー。いや、まあ、俺も削除依頼なんて貴重な体験を味わえた訳だから……ボコボコ殴られたのも、消滅させられそうになったのも、ぜーんぜん気にしてないよ!」

滅茶苦茶根に持ってる。まあ、命を狙われたのだから、それが当たり前でなんでしょうね。
せめてその依頼をした人物がわかれば、少しは違うとは思いますが。狙われた理由がわからないのでは、ストレスも溜まりそうですし。
こうしたやり取りの中、轟は蛇に睨まれた蛙の如く固まったままだ。亀甲縛りの所為で動けないのもあると思いますが。
そんな轟に、彼女はゆっくりと歩み寄り、胸の谷間から札を一枚取り出し貼り付け術を発動させる。どうやら転移で帰すつもりらしい。

『逃がしても良かったんですか?』
『あー、うん。どうせ轟包茎さんに聞いても喋ってくれそうにないし。話のわかりそうな人は目の前に居るからねぇ。被害と言っても、俺だけで他に誰が怪我したとかそういう訳でもないし、俺の場合はほら死ななきゃ安いだから』

確かにそうですが……被害者の朝霧先生がそういうのなら、まあいいでしょう。
私と朝霧先生が念話でやり取りしている中、彼女は転移魔法を発動させ轟を何処かへ転送した後、彼女が乗ってきた柱(まるで桃白白だ)の方へ向かい、柱の中心の一部を動かし中から包みとシートを出して朝霧先生の所に戻ってきた。

「ただ話をする、というのも味気ないからな。私は私で、依頼を終わらせて戻る途中に連絡を受けた物だから、食事がまだなんだ。良かったら一緒に食べないか?」

包みを解くと、中から一人分だと思われるお弁当。まさか、いくら朝霧先生でも初対面の方の餌に釣られ――

「クマー」

釣られたっ!? 私とお嬢様があれ程「知らない人から物を貰ってはいけません」と注意してたのに。
テキパキと準備をする女性と、変わらず頬を赤く染めその様子を見ている朝霧先生。どうにも様子がおかしい、と言いますか流れがおかしい。トンファーの件といい、あの変なやり取りといい。もしかして、私が勝手に勘違いしているだけで―――

『知り合い、なんですか?』
『いや、どっかで会った様な気がするけど初対面のはず。第一印象はテニスが上手そうで、語尾に『だよ』とか付けて話すのが似合いそうなドラゴンテールの子ってくらい。ああ、でも語尾に『だよ』だと、最近じゃまゆちゃんを思い出す』

誰も第一印象なんて聞いてませんけどね。どこをどう見たらそんな風に見えるのかと。それにポニーテールじゃないんですか、あの髪型。あと、まゆちゃんって誰? 私から言わせてもらえば、テニスよりも茶道や華道を嗜んでいる様に見えましたけど……って、第一印象の事は一先ず置いておきましょう。

「準備が出来たぞ。ほら、ここに座れ」

自分のとなりをポンポンと叩いて、朝霧先生に隣に座る様促す。何と言いますか、気安い感じの人だ。最初は躊躇していた朝霧先生も、もじもじしながらゆっくりと指定された場所に。それを見て満足した表情を浮かべながら、お弁当箱を開け、そして始まる朝霧先生の餌付けタイム。

「あ、箸」
「こんな事もあろうかと、携帯している箸が……アレ?」

先程の戦闘でボロボロになっているスーツを弄りながら首を傾げる。内ポケットの中から出てきたのは、箸の残骸。まあ、あれだけボコボコやられればそうなりますよね。

「仕方ない、ほら」
「ありがとう!」

どうしようかと首を捻っていた朝霧先生に、自分の箸をすんなり渡してしまう。そして貸してもらった箸を手に、勢いよくお弁当に喰らい付き始める。少しは遠慮というものを。

「ニコポだけではなくパクポまで使いこなすとは……あの女性一体っ!」
「ぱくぽ? って何なん?」
「自分の作った手料理を食べさせると、何故か食べた相手が惚れてしまう。ポ術の一つです」

朝霧先生といいクウネルさんといい茶々丸さんといい、何でもかんでも、ポを付ければ良いと思っているんでしょうか?

「ふむ、裕香くんがポの地獄と天国を味わっている間に、私の方も仕事を―――」
「えっ! クウネルさんが仕事ですかぁっ!?」
「……失礼ですね。私だってたまには仕事しますよ」
「ニートって皆そう言うよね……」

アキラさんの言う通りです。正直な所、クウネルさんが働いている所なんて見た事ないですし。まあ、存在自体秘密にされている所がありますから、当然と言えば当然なんですけど。

「ところで皆さん、漆黒の堕天使くんは覚えていますか?」
「覚えてるけど……それが、クウネルさんの仕事と何か関係あるの?」
「ええ、ありますよ。それでは」

漆黒の堕天使速報。とは言っても昨日の事なので速報ではありませんが。昨夜、漆黒の堕天使が命辛々私こと『速報の人』の元に辿り着いたのですが、その際。「ここも変わっている……くそっ! やっぱりか!」と叫び出し、状況を把握出来ていない私の前で「やはりここは俺の望んだ世界ではない! もう……こんな、こんな世界になど興味はない! 待っていてくれ、フェイト、はやて! 今行くぞ!」と言い、白い光に包まれて消えてしまいました。漆黒の堕天使が何処かへ行ってしまったので、今回で漆黒の堕天使速報は終わりです。速報の人の次回作にご期待下さい。

『何で、そこになのはさんの名前がない』

差し出されたお弁当を食べていた朝霧先生が反応した。って、反応するところ違いませんか?

「とまあ、こういう事になっていたのですが。おかしな事に彼が消えたのと同時に、彼に関する記憶が全てなくなっている方が出てしまいまして」
「どういう事なん?」
「そのままの意味です。ただ、記憶に関しては、全てなくなっている方と、断片的になくなっている方、そして全てを覚えている方の、三種類。ちなみに葛葉さん調べです」

それは、奇妙な話ですね。私は一応、全て覚えていますが……って、刀子さんそんな事してたんですか。確認すると、お嬢様もアキラさんも茶々丸さんも、堕天使の事は覚えている様です。朝霧先生は事前にある程度話を聞いていたらしい。

「これは私の推測ですが。彼は異世界から来た人間、なのかもしれません。それが俗に言う並行世界なのか、それとも全く別の世界なのかはわかりませんが」

何だかスケール大きくなって来ましたねぇ。更に話を聞くと、彼の一連の行動から未来人の可能性もあるとの事。あくまで可能性ではあるらしいですけど。

「そして旅立った堕天使くんは、勇者王スバルがゴルディヴィータにハンマーコネクトして発動した、ゴルディオンシュラークで光にされてしまうんですね、わかります」
「ハンマーコネクトされたヴィータの身体がやばい」

映像の向こうでは何故か話が弾んでいる。彼女は堕天使の事を知らないはずなので、その辺りスルーしているのかもしれませんが。

『見えます、私には見えます。リリカルな世界を目指していたはずが、ヤマジュン世界に飛んでしまった彼の姿が!』
『何と言う誰得な世界』

名も知らぬ女性と話ながら念話で茶々丸さんと会話するとは、朝霧先生無駄な所で器用なんですね。と、そんな事よりも。

『今回の件について、彼女に聞かなくてもいいんですか?』
『おお、すっかり忘れてた!』

この鳥頭は…っ! そもそも、初対面だと思われる方に対して、そんな無防備な態度で接してどうするんですかと。少しくらい警戒してもいいと、私は思うんですけどね。言ってもどうせスルーされると思うので言いませんが。

「えーと……」
「九条、九条雪だ」

どう呼ぼうか迷っていた所に助け舟。九条……聞いた事のある様なない様な。

「雪さん(何故か呼び捨てに出来ない)……何て素晴らしい名前。だけど何でメイド服じゃないの?」
「逆に聞くが、どうして私がメイド服を着なければならないんだ」
「雪さんだから」
「張っ倒すぞ」

構いません、遠慮なくどうぞ。呑気な顔でお弁当をパクついてる朝霧先生の顔を見て、ちょっとだけイラっとする。
いつの間にか用意されていた麦茶を飲んで一息付いて、ようやく本題に入る様だ。

「轟包茎さん、何で一度断ったはずの依頼を受けちゃったわけ?」
「恐らく、依頼主にある事ない事吹き込まれたんだろ。轟も真っ直ぐというか馬鹿というか……ちょっとアレな所があるから」

それ、大丈夫なんですかね、一応組織っぽいんですけど。
九条さんもそれがわかっているのか、残ったお弁当をゆっくり食べながら、困った様な表情をしている。私的には、依頼主の方が気になりますが。一度断られても尚、依頼する程に朝霧先生が恨まれている?

「その依頼主さんの名前教えてー」
「一度断ったとは言っても、こうして受理されてしまった以上、守秘義務というものが発生するからなぁ。まあ、頂いた報酬を返して無かった事にしてもらおうとは思っているが」
「そもそも、削除依頼されるほどに恨みを買った事なんて……なかったと思いたい」

知らない内に人の恨みを買う事もありますからね。怪しいのは前に高畑先生と一緒に行った出張でしょうか。確かその時に初めて人前でチャオズしたと聞いてますから……巻き込まれた恨み、とか? 味方を巻き込んだとは聞いて……あ、高畑先生は範囲内にいたって言っていた様な。

「この件については、後日改めて謝罪させてもらうとして。個人的に少し話をしたいんだが、構わないか?」
「おk」

これは意外、という程の事でもないですね。どうしてかわかりませんが、九条さんは朝霧先生の事を知っている風な感じですし。
ただ……ただ、一言だけ言わせてもらうのなら。人と話をする時は、胸ではなく顔を見て話すものだ、と。見すぎなんですよ、朝霧先生。

『裕香、お弁当どうやった?』
『何か、懐かしい味がしますた』
『懐かしい味……まさか、九条さんはっ! あ、あ、朝霧先生のお母様っ!?』
「何とそれは気付かなかった、弁当美味しかったよお母さん!」
「誰がお母さんか。私はまだ26だ」

思っていたよりも年上の方だった。一見すると全然そうは見えない、胸以外ですが。まあ朝霧先生よりは、大人に見えますね色んな意味で。外見というよりは雰囲気が大人びている様な印象を受ける。
朝霧先生のお馬鹿なフリに少し眉をひそめながらも、今度は九条さんが。

「今、楽しいか?」

意外な質問。『今』という言葉に少し違和感を覚える。やはり九条さんは朝霧先生の事を知って? 昔、離れ離れになった肉親という可能性も。

「楽しいよ、毎日馬鹿やってるから。本当は20……4とか5だけど、誰も信じてくれないし面倒だから二十歳とか言ってみたり」
「ああ、それは私もよくやる」

やるんですか。

『鯖読んでたんだね、朝霧先生』
『絶対なんかやっとるなぁとか思っとったけど、ホンマにやってたんやなぁ』

151cmですしねぇ、身長。身体の成長、というよりは身体が歳を取らないので、仕方ないといえば仕方ありませんが。

「ただ、不満があるとすれば……この一向に伸びない身長! せめて156cmならまだ納得出来たのに! それに産毛すら生えて来ないヒゲ、スネ毛! 止めにこの歳にもなって未だにパイパンとか! 銭湯に行った時の敗北感と言ったらもう……っ!」

何この暴露大会。何度も何度も拳を叩きつけながら涙目になってるし。そういえば昔、京都に居た頃に誤って見てしまった時も……って、何を考えているんでしょうかね、私は。馬鹿な事を考えるのはよそう―――と、思っていたのに。

「安心しろ、私もパイパンだ」

思わず飲んでいたお茶を吹いてしまった。この人まで何を言い出すのかと思えばっ。
何とも言えない話をしている二人を、思わず睨み付けてしまう。

「そんな事言って、自分で剃ってるんだろ!」
「違う、天然物だ」

何と言うお馬鹿な会話、まるで朝霧先生が二人居るかの様だ、何て悪夢。アキラさんなんて、顔を真っ赤にしながら俯いてしまっている、何が恥ずかしいのかと問われれば、確実に「自分の師匠がとても恥ずかしい」と答えてくれるに違いない。

「パイパン!」
「パイパン」
「俺の股んとこが」
「パイパンだぜ」

もはやどうやって収拾を付けていいのかわからない。パイパンと連呼しながら、手を握り合っている二人を見ていると現実逃避したくなる。

『私も……私もパイパンです!』
『茶々丸ー!』

張り合わなくてもいいですから。本当にどうしてこうなってしまったんだろう、今私は凄く帰りたい。今日の事は何もかも忘れて寝てしまいたい。私が、クウネルさんにタマタマタマちゃんを作る様頼まなければ、普通にお嬢様の護衛をしていられたのに……私の馬鹿。

「そういえば、名乗るの忘れてた」
「知っているから別に名乗らんでもいいけど」
「ああ、依頼で名前知ってるよねー」

私の内心などお構いなしに会話が続いている。本当は仕事しろと言いたい、だけど言ったら空気読めと言われそうで言えない。

「そう、だな―――実験体No210、朝霧裕香」

今この人は何と言った?









身体に満ちる魔力を感じながら、私は歓喜する。今は一時的な物に過ぎないが、それも今日で終わりだ。ぼーやの血を頂き、この忌まわしい封印を消し去る。
ぼーやもそろそろ来る頃だろう。奴の指定した場所は、私の家の近くの森の奥にあるひらけた場所だ。以前、私にちょっかいを出してきた阿呆を迎撃する際に、ついうっかり更地にしてしまった。やったのは茶々丸だがな。
決闘を申し込まれてから、この場所には来てはいなかったが、罠の一つや二つ仕掛けてあってもおかしくはないだろう。
―――来たか。

「一人、か。神楽坂明日菜はどうした? 仮契約したと、茶々丸から聞いていたのだが?」
「明日菜さんは……これ以上僕の私情に巻き込む事は出来ません。貴女の相手は僕一人でします!」

まあ、神楽坂明日菜が居たところで何が変わるわけでもないだろうから、どうでもいい。
目の前にいる獲物を見る。魔法具のフル装備、随分と奮発した様だ。こうゴテゴテしたのを見ると、武装解除したくなる。

「先に約束した通り、私が勝てば貴様の血を貰う」
「はい。その代わり僕が勝ったら」
「ああ、今後一切貴様の血は狙わん」

前回とは違う、今回は油断はしない。律儀にぼーやの魔法戦に付き会うつもりも無いが、久しぶりの全力戦闘だ。やりすぎて殺してしまわん様気を付けねばな。その前に結界を張っておくか。一般人がこの場所に来るとは思えないが万が一と言う事もある。見られたらその後の処理が面倒だ。
パチンと指を鳴らし、この場所だけではなく、森全体を認識阻害と防音の結界で覆う。

「これは……」
「結界だよ。ぼーやも、一般人に見られる事は望むまい?」

準備は整った、それでは始めようではないか。
ぼーやは私から距離を取り、詠唱を開始している。以前と変わらず魔法主体の戦闘スタイルの様だ。魔法具はその隙を補い補助する為の物、と判断してもいいだろう。

「“魔法の射手・連弾・雷の17矢”!」

雷か、得意魔法も父親と同じとは。―――思い出したらイライラしてきたな。
17の雷の矢が私に迫る。四方八方あらゆる方向から来る雷の矢。さて、どう対処してやろうか?
避ける? 何を馬鹿な。同種の魔法で相殺する? それすらも必要無い。
今の状態の私ならば、こうして腕に魔力を集中させ振るえば―――そら。衝撃波が発生し、迫る矢を容易く消し去る事が出来る。

「何を呆けている? まだ始まったばかりだぞ?」

私が駆けだすのと同時に、唖然としていたぼーやも慌てて動き出す。そう、そうだ。魔法を放って呆然としているだけでは意味が無い、その先を予測し、次の攻撃の準備をするべきなんだよ。
と、ぼーやはまだ、新米の魔法使いだったな。父親譲りの馬鹿魔力や、未熟とは言え中々に錬度の高い魔法を行使するから忘れがちになってしまうが。

当てるつもりの無い拳を、ぼーやの立っていた位置に叩きつけ大地を粉砕する。その衝撃で飛びかう破片が、後方に向かって飛んでいるぼーや目掛け容赦なく襲いかかる。この状況を、杖にまたがり加速して範囲内から辛くも逃げおおせた様だ。
ふむ、遊ぶつもりなどないのだが、魔力が戻った事により出来た余裕が、遊び心を生んでしまう。
それに、ぼーやがどこまで食いついて来れるか、試してみたくもなる。
もしこの決闘が、私の呪いを解く事に何の関係もないのなら、それもまた一興なのだが。

「これがエヴァンジェリンさんの全力……」
「まだ全力は出していないがな。何だ怖気付いたのか?」

たったこれだけの攻防、まだ始まったばかりだと言うのに、滝の様な汗を流している。多少プレッシャーを与えながら仕掛けているから、当然と言えば当然か。
腕を組みながらぼーやと同じ高度まで、浮遊術を使い飛び上がり、さらにプレッシャーを掛ける。
突然増した威圧に反応し、懐から魔法銃を取り出しこちらに向けて数発。だが、威力の足りない魔力の弾丸を、障壁で弾き飛ばし無効化。
今のは囮だったのだろう、すでに次の魔法の詠唱は終わり―――

「“魔法の射手・連弾・光の29矢”!!」

今度は光の矢か、それに矢の数も増している。私の放つプレッシャーに耐えながら攻撃を加えるか、中々に面白い。
だが、魔法の射手しか使わないのは何かのブラフか? 情報によれば、魔法学校の図書室に篭り、いくつかの魔法を習得していると聞いているが……まあいい。
今度の光の矢は一直線に向かって来ている。それを見て、無詠唱で発動させた闇の矢に魔力を込め集束し、拳を後方に構え、一気に前に付き出し放出。
放たれた集束の矢は、ぼーやの放った29本の矢全てを消し去り、標的に迫る。

「くっ、“風楯”! あ、あああああああっっ!!」

ほう? 耐えるか。だが、低位の防御魔法では耐え切れまい。ぼーやの魔法障壁もプラスされているのだろうが、それでも堪え切れず後方に押しやられていく。今までは封印のおかげで、この程度の事をするのに魔法薬を消費しなければならなかったが、今は必要ない。そう考えるだけで自然と笑みがこぼれてくる。

「魔法の射手一つでも、この様な使い方もある、覚えておくんだな」

防御魔法と障壁が限界を超えその効果を無くし、抵抗されて多少威力が落ちた集束の矢がぼーやに迫る。

「ア、“加速”!」

急加速で辛うじて避けたか。タイムリミットまでの時間はまだまだある、だが余計な茶々が入る可能性もあるからな。ここらで終わりにさせてもらおう。

「行くぞ?」

魔力を全身に流し込み、身体能力を強化し虚空瞬動で接近掌打で水月を穿つ。苦悶の表情を浮かべ身体を折り曲げながら腹部を押さえるぼーやの顎を、同じく掌打で打ち上げ首に右手を伸ばし掴み上げる。
身体の内側、内臓にダメージを与え、顎を打ち脳を揺らしたのだ、ぼーやの眼の焦点は定まってはいない。

「さて、どうする? 大人しく負けを認めるか? それともこのまま首を締め上げ気絶させてやろうか?」
「ぐっ……うぁ……ま、まだ……」

往生際の悪い。負けを認めた方が楽だろうに。仕方あるまい悪いがこのまま落とさせて―――

「カ、カ、“戦いの歌”っ!!」
「何っ!?」

身体強化の魔法だと? 確かぼーやは簡易版しか扱えない筈……ちぃ、馬鹿霧だな。
それ程力を込めて締め上げている訳ではなかった、故に掴み上げていた腕は外され―――

「“解放”――“白き雷”!!」

ぼーやの手が私の腹部に触れるのと同時に、目の前が白い光に包まれる。
遅延魔法―――っ! いつ準備していたのかは知らんが、このレベルの魔法を溜め込んでいたとは。

「はあ……はあ……」

これで終わりだとは思っていないのだろう。咄嗟に移動し私から距離を取り森の中に逃げ込んでいく。まあ、中々良い手ではあったが、身体を駆け巡りその身を焦がす筈だった稲妻は、瞬間的に障壁を強化する事で防いだ。
使い慣れていないであろう戦いの歌の効力も切れている。隠し球もいくつかある筈だが、使う暇も無い、というか与えん。折角用意した魔法具も同じくな。関係ないが変なタイミングで速報するな、気が散る。
森に姿を隠したぼーやの気配を探る。ぼーやが森に入り込むのと同時に張り巡らせた糸がセンサー代わりにもなる。それに未熟なぼーやでは完全に気配を絶つ事など出来まい。それを理解しているのか、高速で移動しているのを糸が知らせる。

「面倒だ、吹き飛ばしてやる―――リク・ラク・ラ・ラック・ライラック」

万が一に備え、治療薬や増血剤も多めに用意してある。余程の事でもない限り死ぬ事はない。一度誓った約束を破る気もない、私のプライドに賭けて。
両手を前に突き出し詠唱と共に魔力を集束させていく。これを外で使うのは本当に久しぶりだ。馬鹿霧風に言うのなら魔砲か?

「来たれ氷精、闇の精。闇を従え吹雪け、常夜の氷雪」

集束していた魔力が渦巻く様な吹雪に変わり周囲の気温を急激に下げ、夜の闇を更に黒く染め上げる闇の魔力。詠唱が終わりに近づくのと同じく、吹雪と闇が掌の前で完全に混ざり合うのを確認する。

「―――“闇の吹雪”」

静かに呟き完成した魔法を獲物に向かって解き放った。開放された吹雪は凄まじい勢いで木々を薙ぎ倒し目標に向かっている。糸が震える。放たれた魔法に気付き、回避行動を取っているのだと言う事を私に教える。
無駄だ。このタイミングでは、例え避けられたとしても着弾により暴発する氷雪と闇の魔力に巻き込まれただでは済まない筈だ。私の予想通りの範囲を着弾した闇の吹雪が薙ぎ払っていく。
死にはしていないだろう、確認の為近づこうとしたが突然飛来した巨大な何かが私を遮る。

「この馬鹿デカイ手裏剣は……」

間違いない、長瀬楓の物だ。だが、何故? これまで侵入者が来ようが何だろうが、奴はそんな素振りなど見せた事が無い筈、何故今ここで干渉してくる?
そんな私の思考を打ち消すかの如く、お目当ての奴がまるでお姫様にする様にぼーやを抱えながら私の前に現れる。

「最高レベルの強者と戦えると聞いて―――飛んで来たでござる」

気のせいかぼーやの顔が赤くなり、眼も微妙にとろんとしている様にも見えるが、窮地を救われてときめいたか?





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