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朝霧先生(ry  52話 登校地獄でgdgd。その十二。

“雷の暴風”――あの馬鹿ナギの得意魔法の一つ、アンチョコ無しでも詠唱出来る数少ない魔法。

ぼーやの目的と夢、それらが影響しているのかどうかはわからんが、まさか10のガキがこのレベルの魔法を行使出来るとは思わなかった。勿論、未だ魔法使い見習いのぼーやが放った術だ、いくら奴譲りの馬鹿魔力があとうと、術式も魔力の練りもまだまだ甘い。馬鹿魔力のおかげで何とか誤魔化していると言った所だろう。

この身を襲う、凄まじい雷撃と暴風。これで決めるつもりだったのだろう、込められている魔力量も半端ではない。私の“闇の吹雪”にはまだまだ及ばないが、雷の属性付加により誘発される麻痺が厄介だ。まともに喰らったのなら雷撃が身体を焼き、暴風と誘発する麻痺が身体の自由を奪い、術者が放出する限り身体を蝕み続ける。

―――まともに喰らえばの話だがな。

長瀬楓が予想以上の戦闘能力を発揮した事で影に隠れているが、実戦経験が無いに等しい素人が即席の連携で合わせる事は困難の筈、長瀬楓の分身が補佐していたとしてもだ。だが、ぼーやは己の出来る魔法で長瀬楓を的確に援護している。後方支援に徹していたというのもあるのだろうがな。それでもこれは異常だ。ぼーやも俗に言う“天才”なのだろう。ナギとは別のタイプだが。

本当ならばすぐに終わらせるつもりだった。長瀬楓もぼーやも今の私が本気を出せば、先の様には行かず当の昔に地に伏せている。しかし私は何故かそうはしなかった。自分でも不思議に思う……だが、ぼーやと長瀬楓が何処まで喰らい付いて来れるか、そう私はこいつらの限界が、いやその先が見てみたくなったのだ。
この期を逃せば二度と呪いは解けないかもしれんこの状況でだ。どうにかしている。

良い物が見れた。どちらもその年齢では考えられん程の実力と才能を持っている。誤って殺してしまわぬ様加減し力を抑えていたとはいえ、単体、いや長瀬楓の場合は分身もだが、己の出来る全てを出し、私と渡りあったのだから。私は自分の力を過小評価しない、最強レベルの魔法使いだという自覚を持っている。だから驚いた、奴等がここまで出来るとは、と。

多少のイレギュラー(馬鹿霧)もあったが、最も驚いたのは神楽坂明日菜だ。まさか究極技法である咸卦法を習得し、未熟ながらも扱っているのだから。勿論、無駄だらけで改善点を挙げれば山程出てくるだろう。
じじいとタカミチが気に掛けていたのも、奴には才能がある事を知っていたからだろう、それだけではないがな。確信は未だ持てないが、神楽坂明日菜の持つ稀有能力は“魔法無効化能力”だろう。そうでなくては、身体能力が高いだけの小娘が生身の状態で、封印状態とは言え私の障壁を抜く事など不可能だ。

素人とはいえ咸卦法と魔法無効化能力だけでも厄介だと言うのに、おまけといわんばかりに“呪いの魔斧”まで持っているのだから厄介度で言えば、ぼーやや長瀬楓よりも上だ。

呪いの魔斧、適正の無い者にとってはただの斧だが、適正を持つ者が扱えば魔斧という呼び名に恥じぬ能力を発揮する。厄介なのは付加されている能力、『人外に対して本来の数倍の力を発揮する』と『担い手の身体能力を無理矢理引き上げる』の二つだ。
その代わり代償として女としての何かを失う事になるが。呪い、とは言ってもその効果が出るのは扱っている間だけで、後遺症も無いがな。

馬鹿霧も適正はあったのだが、人外が混ざりすぎている奴は拒絶されてしまったため使うことが出来ずお蔵入りになったんだが……ちっ、本当に余計な事をする奴だなアイツは。
おかげで今の私の障壁は簡単に打ち破られるわ、リズムは乱されるわ、雷の暴風を使わせる隙は与えるわで踏んだり蹴ったりだ。

「だが、もういいだろう?」

命のやり取りをしている訳ではない、私にはこいつらを殺す気はないのだからな。だが、折角一時的にとは言え解けた封印のおかげで戻った力も十分に振るう事が出来ない、これはかなりストレスが溜まる。例外と言えば、馬鹿霧のニートボールとやらを撃ち返した時だけだ……まあ、奴なら何だかんだ言って死ぬ事はないだろう。

我慢し過ぎたな、本来の目的を蔑ろにし奴等との戦いを楽しみすぎた。まあ、そのおかげで暇潰しに使えそうな者は見つかったが―――ここらでお遊びは終わりだという事を教えてやろう。

――“術式固定”――

障壁の無い私を飲み込んでいる雷の暴風の回りに私の魔力を混ぜ込みコントロールし、左手で受け止めるような形で荒れ狂う雷撃を押さえ込む。これを使うのは本当に何年振りだろうか?
徐々に凝縮していく雷撃と暴風、弧を描くように掌に集まり一つに魔力球が完成する。使わずとも終わらせる事も出来るが、それでは不完全燃焼でストレスが発散されずイライラが溜まるだけだ。どうせ終わらせるのなら派手に逝こうじゃないか。

掌の上で完成した魔力球が雷の暴風によって発生した瓦礫や木片、砂塵を吹き飛ばす。突然、爆発にも似た現象が起きた事で、大層驚いているであろう奴等に向かってゆっくりと歩き近づいていく。

「な、な……そ、それは、い、一体……」
「まさか、アレを受けて無傷とは……」
「喰らった訳ではないさ、ほら、ぼーやの放った雷の暴風はここだぞ?」

掌の上にある雷属性の魔力球を見せ付ける。思った通り、驚愕の表情を浮かべ動揺している。ああ、いいぞ。そういう表情が見たかったのだ。獲ったと思っていた敵が悠々と歩いているのを見れば、そうなるのも当然だがな。おまけに今の私は“夜と闇の型”によって闇の魔力を纏わせている、この状態から発せられる圧力も相当な物だろう。

「よくやったよ貴様等は、だから褒美に見せてやろう最強の一端を」

――“掌握”――

雷撃の魔法球を握りつぶし我が身体に取り込む。荒れ狂う雷が瞬時に身体を覆い、全ての能力を強化する。纏った雷の影響で若干変化する身体。雷属性は速度を上げる特性が高い。さすがに超高等魔法には及ばないが、このレベルの魔法を取りこんだ時の効果はかなりの物だ。

「行くぞ?」

強化された能力を開放し、全力で地を駆け抜ける。視認出来ぬであろう驚異的な速度で発生した衝撃波が直線状に居たぼーや達三人を吹き飛ばし、遅れて駆け抜けた場所が崩壊する。魔力の限界に近いぼーや、同じく限界に近い長瀬楓、そして魔法無効化という稀有能力を持っている可能性の高い神楽坂明日菜も例外ではない。

振り返って奴等を見てみれば、長瀬楓が辛うじて立っているだけで、他の二人は身体を打ち付け地に伏せている。全力で駆け抜けた、ただそれだけでこれだけの惨状を作り出す事が出来る。だが、それだけでは終わらせない。厄介な能力持ちもいる事だしな。それに、ぼーやにも見せておいていいだろう。

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック――来れ、虚空の雷、薙ぎ払え、“雷の斧装槇”」

右腕の指先に雷の魔力が集束していく、詠唱も短く攻撃の連携に組み込めばかなりの効果が期待出来る魔法だ。それに纏っている雷を上乗せし威力を向上させ、さらに魔力を練り上げ術式を組み右腕に装填。魔法が完成したのと同時に真上へ飛び、奴等の中心に狙いを付け、先程の衝撃波のダメージで動けぬぼーやを見据え。

「この魔法は貴様の父親が好んで連携に組み込んでいた物だ。今私が使うのは少々違うがな」

痛みに耐える様子を見せながら、ぼーやは何とか顔を上げる。こんな状況でも父親の事には反応するか、どうでもいいがな。

「これで終わりだ―――“右腕開放”」

構えた右腕を無造作に狙いを付けた場所へと振るう。極限まで注ぎ込んだ魔力と雷の暴風の術式兵装により強化された雷の斧。振り下ろしたそれは巨大な斧となりて大地を粉々に粉砕し周囲を薙ぎ払う。それでも収まらない雷の魔力は森の一部を消し飛ばし、効果範囲外に居たぼーや達は衝撃波に巻き込まれ再度叩き付けられる。あの程度では死ぬ事もないだろう。直接当てた訳ではないからな。

ふむ、どうやら長瀬楓以外の二人は気絶している様だな。腕を組みゆっくりと歩み寄って見下ろす。

「さて、もうどうする事も出来まい? 別に抵抗しても構わんが、その時はあっさり眠ってもらう事になるぞ?」
「そ、その……様で……ござる、な。いやはや……参ったでござる……」

その状態でも笑みは崩さないか、どこまでも面白い奴だよ貴様は。
ぼーやもしばらく目は覚まさないだろう。神楽坂明日菜はどうかわからんが、今回の決闘はこれで終わりだ。溜まっていたストレスも今ので大分解消された。

「おい、そこに隠れているオコジョ」
「ひ、ひぃぃ!?」
「安心しろ、血は頂くが命を奪う訳ではない」

約束を破る訳にはいかんからな。よし、後は茶々丸を呼び付けて準備させるだけだな。
ああ、これでようやくこのふざけた呪いともオサラバ出来る。これほど嬉しい事はない……が、ぼーやの血を吸っても本当に解けるかどうかは試してみんとわからんがな。








実験体時代に詠春おじ様に助けられたのがきっかけで、いつの間にかこの世界に入り込んでしまった。初めから誰かのスネをかじりたいという欲求があったのだと思う。ロリババァからお主人ちゃん、果ては同僚まで、あらゆる人達に寄生した。
今では麻帆良のニートとして、学園でも名の知れた存在になっている。

脚の大地にめり込む音が俺の危機感をますますかきたてる……いつになく巨大化した己のニートボールを、みだらなポーズで受け止めるうちに俺は無我の境地に入って行く、って俺がいちばんなんたらごっこしてる場合じゃねぇ。このままじゃ……

「し、死ぬっ、死にますっ、し、死んじゃいますぅ、死っぬぅぅぅぅぅ!!」

いや、まだ死なないがね! 何だこのアホみたいな威力は。いくら俺が死に難い体だからって、こんな、こんな馬鹿魔力乗せて撃ち返すことないじゃないか! ちくせう、今度最終形態になって皆にもふもふさせている所をエヴァに見せてやる! エヴァは見てるだけです、エヴァだけもふ禁。

勢いに負けて押され、足元が崩壊して行く。このままではマジで「こんなっ…ほおお(ry」な展開になりかねん。再度、全身に力を入れ、多重瞬動で勢いを付け押し返す。何とか持ち堪えているが、このままでは……っ。

「頑張れ裕香。うんたんうんたん、だ」

うん…たん…? そ、そうか! 右腕をニートボールから離し、左腕に障壁を集中させこの状態を維持。その間に右腕に気を集束。後は――

「うん!」

右腕を瞬動で加速させニートボールにめり込ませる。俺の魔力とエヴァの魔力が混ざり合った破壊の塊(笑)は、めり込んだ右腕を容赦なく蝕んでいく。その痛みに耐えながら集束させた気をニートボールの中心へ無理矢理流し込み融合させ―――

「たん!」

ニートボールの中心で魔力と気の拒絶反応を起こさせて中から爆発させる、うんたん関係ねえ。
左腕に集中していた障壁を身体の前面に展開させ魔力を流し込み強度を上げ爆発に耐える。幸いな事に爆発の範囲はそれほど広くはなく、エヴァの馬鹿魔力が込められていた割には、周りの被害も微々たる物だ。代償として右腕が消し飛んだが、これは昔から慣れっこなので問題ない、痛いには痛いが慣れれば快感である、冗談だけど。
雪さんは、どうやら爆発の衝撃を障壁で完全に遮断した様だ、おお凄い凄い。

「今日はよく腕が無くなる日でありますなぁー」
「轟にもやられてたみたいだな」
「あるぇー? 何で知ってるの?」
「何、ただ聞いていただけだよ。依頼をこなしている最中は何が起こるかわからないからな。それぞれが持つ武具にはそういった機能を付けているんだ。私のには付けていないが」

へぇ、何か色々大変なんだなぁ。と、腕を再生再生……む、再生速度が遅い、調子が悪いのは変わらんみたいだ。轟さんにやられた時は戦闘中なのもあって、普段の倍以上の魔力を使いとっとと再生させたけど。今は別にゆっくり再生でも問題ないだろ。
2分程かけてようやく元通り。つか、スーツがボロボロだ、これじゃどう見ても変質者にしか見えない、おまけにノーパンだし。ポロリもありそう! 
タマに変身出来れば全裸でも問題ないんだけど……そうだ。

「雪さん雪さん、何か身体の調子が悪いんだけど、原因がわからんので何にも出来ないのであります」
「調子が悪い? 具体的には?」
「いつもより魔力の消費量が多いのと、断罪の剣が使えなくなったのと、変身が出来なくなった」
「………」

たわわに実ったおっぱいを腕に乗せ手を顎に当てて黙り込む。おっぱいすごいですね。
何年か振りにあったのに(俺の記憶にはないけど)、こんなに親身になって考えてくれるなんて……ポッ。
雪さんがそこに居るだけでポッ、見ているだけでポッ、微笑まれてポッ。ポッポポッポ、一人ポ祭りでござる。こんな状態になるのはネカネさん以来である、ポ術の使い手恐るべし。

「多分、裕香の不調の原因は……コレだな」

思い当たる事があったのか、おっぱいが乗っていた右腕を胸の谷間に入れてもぞもぞ、出てきたのは野球ボールくらいの蒼い玉。……まるで四次元ポケットの如く便利な谷間だ。
取り出された淡い光を放つ蒼い玉。見ているとこう……胸の奥がムカムカしてくる。すごく…壊したいです。

「これには裕香の意思を無視して下した命令通りに操ったり、能力を制限する力がある」

実験体が暴走して牙を向かない様にする為の保険、なんだとか。まあ、確かに保険の一つや二つないと、実験なんて出来ないわな。実験体にされた恨みで復讐されたら敵わんだろうし。ちなみに効果範囲は結構広いらしい。

「恐らく、私が麻帆良の近辺で依頼をこなしている間に、お前の存在を感知して力が発動してしまったんだろう」

こんな事は初めてだと首を振る、そのついでにおっぱいが揺れる。雪さんが言うには、今の今までこの玉が反応する事は無かったらしい。

「これ、誰でも使える訳?」
「いや、それはない。これを使えるのは創った研究者達と……私だけだ」
「ほほう、まことでございますか?」

研究者達は全員あぼんされてるから問題ない。というか本当に俺の意思を無視して、あんな事やこんな事をさせる事が出来るのか気になる。と言う事で、試しにやってみてもらった。
玉をこちらに向けると、どんどん光が強くなる。この光を見ていると変な気分に―――

「防御、伏せ、お手、腕、心臓、足、足!」

何とぉ! 言われた通り、両腕を上げボクシングの様なスタイルで防御の構え、即座に倒れ込み地面に身体をひっつけ、起き上がって右手を雪さんの左手に乗せる。次に頭に浮かべた仮想敵の腕を狙い掌打を放ち、同じく心臓の位置に一撃、姿勢を低くして脚払い、その勢いを殺さず同じ所へ下段蹴り。
本当にあんな事やこんな事をさせられてしまったっ!

「お、恐ろしい……」
「……今のは別にコレを使わなくても大丈夫そうだったな」

そうかも、ついでに若本ヴォイスだったら絶対に言う通りにすると思う、ナイフ使えないけどナイフ使った振りして、逆手に持ったナイフを相手の腕の内側から入れそのまま筋肉を切断! 相手の指を銃の引き金から離すと同時に左の肩から手を回しストラップで首を絞める、とかね。とまあこんな感じに真偽も確かめたところで、この誰得玉を。

「壊してもいいかなー?」
「……壊すのか?」

おっと、ここで僅かな拒否反応。どうやら雪さんは誰得玉を壊す事には乗り気では無い様であります。個人的には百害あって一利無しだから粉々に粉砕してやりたいんだけど。変身出来ないとタマになったり、最終形態でエヴァに嫌味行為をやったり、他の変身を模索する事とか出来ないからねぇ。能力の劣化も地味に痛い。

「何か駄目な理由でもあるの?」
「……私が研究所から出た時に持ち出した物でお前に縁のある品、だからかな。他にもあるが、これは少し特別というか。数年前に裕香が生きてる事を知るまでは形見の品的な扱いだったから」

数年前? 俺が京都と麻帆良を行ったり来たりしてた頃かね? 
研究所を出た後、一年後位に研究所を見に行ったら見事に壊滅していて、他の実験体の子はおろか、研究者達も誰一人存在してなかったから、死んだものだと思っていたらしい。無事に生きて立派にニートやってるよ!

「むぅ……思い入れのある品、とか言われたら壊すのもちょっと忍びないなぁ」
「いや、他にもあるにはあるんだ、この洋剣もそうだし。それに、さっきも言ったがお前には返さなければならない恩があるから……壊してしまうのはいい。いいんだけど、感情が納得出来ていないだけだ」

なるほど。まあ、長年大事にしていた物を壊していい? とか言われたら誰だってそう思うわな。少し軽率だった。研究所内では、まるでぬこだけど犬の様に後ろを引っ付いて歩いてたって、言っていたし仲が良かったのも関係あるのかもね。つか、初代お主人ちゃんだしな。おっぱい大きいし。

「でもなー、流石に教師やってて性欲を持て余すとか洒落になんないし」
「それは、問題だな。そこまで影響が出ていたとは予想外だ」
「壊す以外にこれの能力を封印する方法とかないの?」
「む、無い事はないけど、今の中途半端に発動した状態で封印処理をすると、それがお前に影響を及ぼして最悪の場合、今以上に裕香が使い物にならなくなる」

それは困る。麻帆良から出ないのなら、多少の能力制限は構わないけど、これから修学旅行があるから、こちらとしては万全の状態で向かいたい所。気になる事もちらほらあるし、能力が制限された所為でこのかに万が一の事があったら、詠春おじ様に顔向けが出来ない。
ちなみに、完全に発動させても封印は出来ないらしいのであります、何て迷惑な玉なんだ。

「うーむ、どうしたものか………ん、そうだゲームをしよう」
「DQMでありますか!」
『私の海の幸パーティ育て終わったよ』

なんと、さすがアキラ。これは全力で通信対戦せざるを得ない。

「そっちのゲームではないが。この玉を破壊する事前提で説明すると、不完全な状態のまま破壊すれば裕香にどの様な影響が出るかわからないから、まずは完全に発動させる」
「ふむふむ」
「でだ、私は完全に発動した玉を守るから、裕香は私の妨害をやり過ごし玉を破壊すればいい」

ほほう、中々に骨が折れそうなゲームでありますな。完全に発動した状態でどれくらい能力制限されるかわからんし、雪さんに至っては、轟さんの反応から察するに確実に轟さんよりも実力は上だろう。おまけに俺と同じ研究所出身で唯一の成功体、実力が未知数な上に、下手したら変身能力を持っていてもおかしくはない。結構不利な条件でありますな。

「裕香が戦闘不能になった時点でゲームは終了。罰として裕香には可能な限り私の願いを叶えて貰おうと思う」
「脱ぎたてのパンツが欲しいとか言われても現在ノーパンだから叶えられないよ!」
「誰も欲しいとは言っていないし、それはいらない。まあ、これはゲームが終わってからだな。ああ、裕香が負けた場合は私が玉の制御をして効果を無くすから心配は無用」

説明し終えた雪さんが俺から距離を取る。つか、ゲームに参加するとは言ってないんだけど、まあいいか。
右手を頭上に掲げ、眼を閉じ念じる様に魔力を誰得玉に送り込む。するとそれに反応した誰得玉が激しい光を放ちながら宙に浮かび、光の膜がゆっくりと包み込んでしまった。これはバリアかね。
試しに軽く魔力砲(ニートビーム)を放ってみると、見事に弾かれ無効化されてしまう。能力の劣化は……それ程でもない様だな。多分、戦闘によって能力の変化に緩急を付けて使っていたんだろう、完全に能力を封じれば実験で得た戦闘能力がパアでありますからなぁ。と言うか能力の封印は本当にただの保険の様だ。

「それじゃあ、始めるか。ちなみに、あのバリアを突き破るにはかなりの威力の攻撃でないと不可能だから」

むう、雪さんの妨害を凌ぎつつ、あの無駄に強固なバリアを突破しないといけないのか。これはキツイ。
左手で鞘を持ち腰を下ろす、これは居合いかね。どうみても洋剣にしか見えないんだけど、両刃の洋剣で居合いとか相性悪過ぎると思うんだけど。

と、そんな俺の心配は無駄だった様であります。視認するのが困難な程の速度で抜き放たれた剣から、斬撃が衝撃波となって襲い掛かる。即座に腰に下げてあった『ぬこのしっぽ』を抜き衝撃波を受け、合気の要領で受け流そうとしてみるも、重すぎて完全に受け流す事は出来ない。まさか神鳴流みたいな事やってくるとは思わなかったわ。

「って、ちょッ」

衝撃波を受け止めている内にいつの間にか距離を詰められていた。速い、いや速いんだけど……何で宙を走ってるのさ!? 見た感じ虚空瞬動や浮遊術を使っている訳でもない。まるでそこに足場があるかの如く、宙を蹴り疾走している。宙を走る人とか初めて見たわ。

擦れ違い様に振るわれる剣が肩を切り裂き血飛沫が舞う。―――抜刀から納刀に至るまでの速さが尋常じゃない。せったんとか刀子さんよりも速いんじゃないかこれ。洋剣でここまで出来るとか反則過ぐる。それに一瞬、剣が異常にしなってた様に見えた……訳がわからん。

肩の痛みを堪え、背後から迫る一閃を振り向き様に振るった剣で受ける。剣から伝わる衝撃が両腕に痺れを走らせ動きを鈍らせる。この細腕で何でここまで重い斬撃が繰り出せるのかと。

にわか剣術使いの俺じゃ分が悪い。別荘を使ったとは言え数ヶ月にも満たない俺と、恐らくは十数年間剣を振るい続けたと思われる雪さんじゃあ、格が違う。ちょとsYレならんしょこれは・・? どう見てもぜんzぇんまったく完全に基本スペックが違い過ぐる。
おまけに先の一撃で黄金の鉄の塊よりも硬いかもしれない、ぬこのしっぽが一部削れている始末。ぬこのしっぽに自動修復機能がついてて良かった、今回のでそれがわかったよ>>合法ロリ感謝。

それにしても、劣化してるとは言え気で強化された『ぬこのしっぽ』を削るとか、雪さんの力も尋常じゃないが、あの剣も相当なもんだ。特別な術式を刻んでる訳でもなさそうだから、純粋に素材が良かったのか?
……そういえば「この剣もそうだし」とか言ってた様な。もしかしたらあの剣、俺の尻尾が素材に使われてるんじゃないだろうか? だとしたら―――

「考え事をしている暇なんてないぞ?」

確かにそう―――って!? 剣が伸びた!? 
余計な事を考えて反応の遅れた俺の左腕に突き刺さる剣。こんな状況で油断する俺の浅はかさは愚かしい。だけど、これであの剣が竜の尾で出来ている事が確定的に明らかになった、筈。が、だとしたら何で使いこなせるのかと。あの剣を作った奴が雪さん用に調整した? それとも他の素材を使って細工をしたのか? いや、今はいい。

「ふんっぬぅ!」

左腕に力を入れ突き刺さっている刃から無理矢理逃れる。深く刺さっていた剣から逃れる為に左腕が宙ぶらりんのグロ祭りになってしまったが、普段の数倍異常の魔力を込め瞬時に再生。

雪さんはこれを『ゲーム』だと言った、という事は本気を出すつもりはないんだろう。はずれた剣を元に戻し鞘に収め、こちらを見ながら微笑んでいる……ポッ。
正直なところ、雪さんに見られるだけで俺の胸の奥が恋心でマッハである。ポッされながら戦うのは正直キツイ。おまけに動くたびにたゆんたゆん揺れる豊満なメロン。着物から覗く白く悩ましい生脚。風に揺れるドラゴンテール。普段の俺なら色香に騙される様な事はないが(ホントだよ!)、誰得玉の所為で性欲を持て余している上に、相手はポ術使いの雪さん。本気を出していなくてもパない実力。

これはもう、本日二度目の裏技解禁するしかない。……裏技使っても勝てる気がしないのは気のせいですかねぇ。
素のままじゃ、力も速さも向こうが上だが、多重瞬動を使えば。

「俺は麻帆良一の早漏である!」

気と魔力を同時使用し瞬動を発動させる―――

「おおっ?」

が、轟さん戦で使った時よりも速度が落ちている。それでも通常の瞬動と比べれば段違いの速さなのだが、それを見ても、多少驚いた表情を見せるだけで雪さんの眼は俺を捉えている。
これも誰得玉の影響か、身体に掛かる負荷も通常時より酷い……今の状態だと二重が限界だな、それ以上は耐えられそうに無い。

「―――せいっ!」

地で瞬動を扱う欠点の一つに曲がる事が出来ないというのがあるが、多重瞬動なら曲がりたい方向に瞬動を発動させるだけで勢いを殺さずに曲がる事が出来る。とは言っても虚空瞬動や浮遊術を使える奴には関係ないのだろうが、これはあくまでも副産物であって、多重瞬動に期待している効果ではない。
そもそも、これは昔咸卦法を発動させたタカミチの居合い拳が『見えていても回避出来ない』という屈辱から生み出した物だ。たとえ眼で捉える事が出来ていても、身体の反応が追いつかなければ意味が無い。故にこうして『見てから回避余裕でした』的な技術を身に付けたのである。

雪さんの剣速は鋭く速いが見えない訳じゃあない(本気の速度ならわからんが)。見えてさえいれば多重瞬動で回避が出来る。
それに加え、全身のほぼ全ての部位で瞬動を発動させる事で回避だけではなく、一撃の威力を高める事が出来る。明日菜にも腕相撲で負ける程度の力しかない俺にとって、これ程相性のいい技術はない。

ぶっちゃけ成長が止まったのと同時に、いくら身体を鍛えても素の身体能力が上がらなくなったからな。気や魔力の質を高める事でどうにかこうにかなってはいるが、んまそれを補う為の多重瞬動なんだが。

「―――っなるほど、轟の様子が変わったのはこれの所為か。中々面白い事をするじゃないか」

それを用いてようやく互角。速度で上回っていてもやはり力では及ばない。確かに、雪さんの斬撃は回避出来てはいるが、こちらの攻撃も当たらない。
妙な違和感を感じて探って見れば―――なるほど、障壁の範囲を広げてたのか。恐らく、俺の攻撃が障壁に触れた瞬間に察知して回避してるんだろう……デタラメにも程がある。その分障壁の強度は落ちてはいるが。

さすが、幼女時代に悪魔達相手に無双しただけの事はある、というかパねぇっス! 
宙を自在に走り回る訳の分からん移動術、雪さんに取ってはこの『見える範囲全てが足場』という事なんだろう。おかげで制空権は雪さんの物。前方に浮いている誰得玉を破壊するどころか、近づけもしねぇ。

駄目もとで二重から三重に増やして一気に……駄目だな、隙がなさすぎる。それに雪さんは今の所あの変な移動術以外は剣術しか使っていない。仮にも『成功体』と呼ばれた人だ、アレに近づいた瞬間何かの魔法でやられる可能性もある……詰みか?

「動きが鈍くなってきたぞ?」

っ! また反応が遅れたっ、幸い振るわれた剣は胸を掠っただけだったが。いくら能力が劣化してるからって、人の自慢の障壁をホイホイ破壊するのはやめて欲しい。……これは本格的にまずいな。気も魔力も多重瞬動の使い過ぎで心許なくなってきている。
いっその事チャオズするか? いや、今の状態じゃ威力は期待できない。せめて断罪の剣が使えれば。

「策が尽きたか? ならそろそろ―――お終いにしようか」
「なっ、うおっ!?」

剣速が上がった!? 無造作に振るわれた剣を辛うじて受け止め―――これは、重さも変わった!?
受け止めた剣は拮抗する事すら出来ず振りぬかれ吹っ飛ばされてしまう。あまりの重さに倒れてしまいそうになるのを、背中で瞬動を発動させ無理矢理体勢を整え終わるのと同時に、雪さんは振るわれた剣を地面に刺す。一体何を―――

「これは―――」

刺した剣に先程まではなかった術式が浮かび上がり、剣を抜いた瞬間大地が盛り上がり槍となって襲いかかってきた。驚いている暇は無い、多重瞬動で真上に飛びあがり回避しつつ迫る槍をニート一閃で薙ぎ払う。

「―――いい反応だ」

真上!? 雪さんの足元に消えかけの魔法陣……転移魔法かっ!
上段に構えられた剣が先程とは違う術式を浮かび上がらせながら振り下ろされる。刹那、頬を撫でる風……何かを理解するのを遮る重い斬撃。ぬこのしっぽを盾にする様に両手で受けたが、尋常ではないその重さに耐え切れず無様に落とされ大地に叩き付けられる。
全身に走る痛みに堪え見上げた雪さんの剣にはまた違う術式。……何だあのチートソード。

「ぐっ……」
「ん? まだ治癒出来るだけの魔力が残っているのか、思っていたよりもタフだな」

いつの間にか降りてこちらを見下ろしているが、追撃を仕掛けてくる気配はない。
身体の方は……駄目だな。魔力は今のダメージを治癒するのに使ってスッカラカン、気も身体強化出来るか出来ないかってところか。
……ちょっと待てよ。

「ね、ねえ雪さん」
「何だ?」
「雪さん、あの誰得玉を完全に制御する事出来るんだよね?」
「ああ」
「ならこのゲーム、やる意味無かったんじゃ……」

壊してもいいか、とか言い出した俺が言うのもなんだけどな。持ち主が雪さんならそう変な事には使わないだろうし……少しは疑った方がいいのかもしれんけど、雪さんに対してはそういった感情が浮かばないので仕方ない。

「……まあ、気にするな。私としても今の裕香がどれだけ出来るか試してみたかったし」

それなら誰得玉の影響無しの万全の状態でやりたかったですよっと。

「取り合えず、裕香は戦闘不能と言う事でこのゲームは私の勝ち、だな」
「ボロ負けとか悔しいです!」

能力が制限されていたとはいえ、裏技使ってこの様とか……恥ずかしい。
そういえば負けたら『罰として裕香には可能な限り私の願いを叶えて貰おうと思う』とか言ってたけど……ま、いいか。そ・れ・よ・り・も!

「ちょっとこの格好じゃまずいから、誰得玉の制御お願いしてもいいですかね」
「ほぼ全裸だしな。チラチラと裕香のが見え隠れしているし」

こんなの見られたら間違いなくタイーホであります。はやくタマにならないと!
浮かんでいたあの今井マシーン誰得玉がゆっくりと降下し、雪さんの胸の谷間に吸い込まれていく。そのまま雪さんが集中するとアラ不思議。身体にあった違和感が消え―――

「ターマーだーぞー」

変身能力解禁。能力の劣化も全部吹き飛んで気分爽快な上に、あの妙な感情の昂りもない。ああ、素晴らしきぬこボディ! たった半日にも満たない間なのに、何ヶ月も変身してなかった様な感覚が!

「これで、この玉が裕香……タマに影響を与える事はないと思う」
「めでたしめでたしですね、わかります」
「久しぶりにタマの姿も見れたしね。それじゃ後日、改めて来るから」

おっと、意外とあっさり帰ってしまうのでありますか? タマとしてはちょっと、ほんのちょっとだけあのけしからんおっぱいでもふもふしたかったんだけど。後日来るって言ってるからその時でいいか……もふもふさせてくれるかな?

そんなぬこの考えを他所に、張られていた結界を解いて、お弁当を回収し乗ってきた柱に居れ……その柱を持ち上げ帰るのであろう方向へそぉいっと飛ばし、追いかける様に飛び乗り帰ってしまった。本当に白桃桃みたいだな。

徐々に見えなくなっていく雪さん姿を眺めていたら、入れ替わりに―――

「裕香くんがフルボッコされたと聞いて飛んできたよ」
「何だ、ヤニメガネか」
「何だとは失礼だねアル中猫」

だからアル中じゃないと。つか、出張の帰りか? ……フルボッコされたの何で知ってんだ? じいちゃんでも覗いてたんだろうか?

「俺はこれから巡回警備の続きをやらねばならんだけど?」
「付き合おうか?」
「タカミチ……ポッ」

と、こんな感じでエヴァ達の事をすっかり忘れ、巡回警備を再開するのであったとさ。
あ、今日の分の報告書どうしようかなー……詳細に書いたらアレだし、適当に書いて後は雪さんとその場で誤魔化そう。あー酒飲みたい、働きたくない、もふもふしたい!




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