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朝霧先生(ry  54話 最終形態でもっふもふgdgd。

「そーら、貴様の欲しがっていたエーテル(魔力を回復させる秘薬)だぞ? 巷でナウったポーションの味を参考に私が手を加えた特別製だ。ん? 欲しいのか? 不味いの3個欲しいのか? 3個……いやしんぼめ!」
「がぼぼぼぼぼぼぼっ!?」

魔力切れを起こした朝霧先生にエヴァンジェリンさんが、魔力回復と言う名の名目で妖しげな秘薬を問答無用、そして無理矢理飲ませている。いや、飲みきれず口から溢れ出してとんでもない事に。
技の開発に失敗し、ヤムチャと化した朝霧先生の身体に鞭を打つ様なこの仕打ち。恐らくすぐに最終形態もふもふが出来なかった腹いせに八つ当たりしているのでしょう。

「がふぁっ! 不味い! え、エヴァっ、ここここれくらい、魔力があれば十分っっ!?」
「ん~? 聞こえんなぁ? 何々? まだ足りない? まったく、この欲しがりやさんめ!」
「だからっ、ぶふぉあぁが、ふがぼぼぼぼぼぼぼぼっ!?」

……ふう。にわかもふラーのエヴァンジェリンさんらしい行動だ。真のもふラーは焦らない。そもそも、別荘という反則な空間の中にいるのだから、自然回復するまで待ち、心身共に全快になってからもふもふするべきなんですよ。

「もふもふする相手の身体を気遣ってこそ一流。何故それがわからないのでしょうか?」
「それわかるの多分、刹那さんだけだと思う」

アキラさん? 瞑想を終えた様ですね。私も瞑想に混ぜてもらう事がありますが、アレは自身の技量が高まれば高まる程、必要とする集中力やそれを乱さぬ精神力が必要になる修練。
アキラさんだけではなくお嬢様もですが、かなりの回数を重ねているにも関わらず、それらに耐え続けている。向上心と根気が無ければ、並の人ならば止めてしまっていてもおかしくはない、そんな修練を続けているお二人には賞賛の言葉しか思いつかない。

事、気や魔力のコントロールならば並の術者を遥かに越えているだろう……まあ、お二人は天然な所がありますから、自分達ではその成長に気付いていないかもしれませんが。

「うへぇ……頑張ったわよ……私、頑張ったわよ……」
「あ、明日菜さーん!?」

こちらは新たに加わった修行仲間のネギ先生と神楽坂さん。ネギ先生は大丈夫みたいですね、たしか魔法学校を主席で卒業した優秀な子だと聞いていますから、集中力がある方なのでしょう。……本当に10歳なんだろうか?
そんなネギ先生とは対照的に、神楽坂さんは……何といいますかボロボロですね。あまり集中力がない方なんでしょうか? それでも一時間やり遂げたのだからある意味誇ってもいいとは思いますけど。

「どうだ馬鹿霧? もう全快しただろう? ほら、早く最終形態になれ」
「に、ニート使いの荒いグランドマスターめ……」
「……ここではこういった光景が日常なのでござるか?」
「いいえ、そういう訳ではありません。今日のはたまたまです」

お茶を楽しんでいた楓と茶々丸さんの会話。さすがにこれが日常だったら嫌ですが、割と似た様な状況には何度か遭遇していますね。あの折檻の様なものは、普段茶々丸さんと組まれからかわれている意趣返しの様な物でしょう。

「仕方ない、約束は約束だからな……」
「おおっ! やっと最終形態が見れるんやね! ウチのもふもふスカウターが壊れんか心配や!」

お嬢様のテンションが高い。最終形態を一度も拝見した事が無かったのだから、もふもふ好きなお嬢様は凄く楽しみにしている様だ。遂に私の中の究極と至高が一つになる日が来た、とそういう訳ですか。

「さあ、勿体振らずにさっさと変身しろ」
「はいはい」

ひらひらと右手を振りながら投げやりな返事そして前準備、最終形態の基点となるタマへ。いつも思うのですが、一瞬で変身してしまう様子を見るとどういう原理でそうなっているのか気になる。

「くっくっくっ……この姿はタマと違ってそう見れる姿じゃあない、光栄に思うがいい!」

また始まった。小さな身体を振るわせて全身に力を込めているのだろう、変身には必要がないらしい気を無駄に放出して、タマの周囲の空気に振動を与えて雰囲気を出している。本当に無駄な演出だ。

「かあぁぁぁっ…………今回はフリーザ様リスペクトでお送りしたいと思います」
「いいから! 余計な事など言わんくてもいいから変身しろぉ!」

堪え性の無いエヴァンジェリンさんをスルーして更に気を放出させる。かなりの範囲に放出している様で、タマを中心にかなりの範囲が揺れを起こしている。

「きえぇぇぇっ!?」

以前も聞いた奇声を上げながらようやく変身する様だ。フリーザがどうたらと言っていたので、恐らく最初に変化が訪れるのは―――

「ふんぬっ!」

―――身体の中心部分。気合と共にいつもなら出ない筈の、ボンッという鈍重な音が巨大化するのと同時に出る。ただ頭や四肢、それに尾はそのままですが。

「にゃーん」
「た、タマ、それじゃあ顔が隠れて見えないよぅ……」
「あ、でももふもふ力がこの時点で53万を遥かに超えたえ!」

バランスが悪いというレベルではない、おでぶな猫ちゃんを更に大きくした様な……イメージ的にはセル(自爆直前)でしょうか? 四肢と尾の長さ的な意味で。……もっと酷いですね。
ネギ先生と明日菜さんは口をだらしなく開けて呆けている。楓はにこにこと笑みを浮かべながら眺めているだけ。
そんな皆さんの様子を一瞥し(顔が隠れているので判断が付き難いですが)、次の変化に移る。

「はーひふーへ……んほぉぉぉっっっ!?」

ば、バイキンマン? 確かに中の人は同じですが、それをチョイスするとは思っていませんでした。何か別のも混ざっていた様に聞こえたのは気の所為でしょう。
尚も奇声を上げ続け、前足に変化を与え始めるタマ。昔、戸愚呂(弟)が爆肉鋼体した時の様に筋肉が脈打ち、前足の付け根から筋肉が盛り上がって行き先端まで一気に巨大化。もちろんもふもふ装備。

「すふぃんくす!」
「見えなくもないけど、やっぱり顔が……」
「アキラ、顔は最後の方なんだぜ? 今度単行本貸してやるから見直しておけよ?」

私もこの様な感じでタマから、余り役に立たない無駄知識(漫画編、ゲーム編、ネット編)を叩きこまれていましたね……懐かしいです。おかげで、ある程度ならタマのネタに反応出来てしまう自分が悲しい。まあ、そういった知識ではお嬢様や茶々丸さん、それと何げにエヴァンジェリンさんにも及ばないんですが。

「く、くそっ、またや! また暴れ出しおった! お、収まるんや! 収まるんやウチの全身!」
「全身っ!? あんたどんだけもふもふ好きなのよ……」
「あ、でも僕わかる気がします」

そうなんですか? ネギ先生にももふもふの良さがわかる、という事は同士の誕生でしょうか。

「ネカネさんボディでもふもふする的な意味で?」
「……何だぼーや? そんな事をやっていたのか?」
「ちょ、今は違いますよ!? やってませんからね!?」
「……その皺寄せが私に来てるんだけどねぇ」

話の流れから察するに、ネギ先生は神楽坂さんにもふもふしていると言う事でしょうか? この歳の子なら人の温もりが恋しい年頃でしょうから、珍しくはないとは思いますが。ああ、神楽坂さんは子供が嫌いだと聞いた頃があった気が、だから苦虫を噛み潰したかの様な表情を浮かべているんですね。諦めも幾分か混ざっている様にも見受けられますが。

「ほおおおおおおおおおお!!」

と、そうこうしている内に今度は後ろ足が巨大化してバランスが良くなってきました。その勢いのまま首の辺りを伸ばす様に力を入れ、猫の顔から虎の様な顔に変化する。そして猫の尻尾を竜の尾に変え最後、巨大な翼が背中からメキメキと音を立てながら形を作り出し、ハァハァと荒げていた息を瞬時に整え最終形態の完成。

「ところで俺の最終形態を見てくれ、こいつをどう思う?」
「な、なんかやたらとデカイわね……」
「すごく……もふもふしとります。ウチのもふもふスカウターが壊れたから、もうええよね? ウチ、頑張ったよね? もう、ゴールしてもええよな?」

もはや我慢の限界だったのでしょう、お嬢様が最終形態のタマ目掛けて駆け出して行きました。他の皆さんの目が無かったのなら、私だって絶対にやります、ええ、やりますとも。

―――が、そんなお嬢様の希望を。

「おお、すまんなぁ? こいつは一人乗りなんだよ」

容易く打ち砕いてしまう真祖の吸血鬼が一人、エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェルその人である。まるで、某漫画のキャラの如き発言、そして私が感知出来ない程の速度でいつの間にか、タマの背に乗り勝ち誇った笑みを浮かべ優越感に浸っている。

「そ、そんなぁ……う、ウチのもふもふぅ……」
「さすがマスター、私達はタマちゃんの突撃命令が出るまで待機していたのにも関わらず、ご自身は我が物顔でタマちゃんに跨って……跨って……ズルイです」
「何とでも言え、そもこいつが最終形態になったのは私との約束がきっかけなんだ。なればこそ当然の権利だと思うが? ククク、嫉妬は見苦しいぞ? 茶々丸、近衛木乃香」

おめぇの席ねぇから! という文字が、エヴァンジェリンさんの後方に浮き上がっている様に見えたのも、気のせい気のせい。この場合タマが拒絶するなり何なりの反応をすれば、何か違うのかもしれませんが……最終形態のタマはもふもふされるとふにゃけてしまうので、それも無理。
かと言って、このままエヴァンジェリンさんの好きにさせるのは、もふもふ愛好者としては屈辱。―――それならば。

「タマ、エヴァンジェリンさんに『高い高い』をしてあげて下さい」
「高い高い……だと? 何だそれは? ……そうか、この状態で空を飛べと言う事だな? ふふふ、中々空気が読めているじゃないか桜咲刹那」

何を勘違いしているのでしょうか? 私の言っている『高い高い』は空を飛ぶ事ではない。飛ぶのは『エヴァンジェリンさんただ一人』、飛ぶというのとは違いますね、あくまで『高い高い』ですから。

「これせったん専用の遊びだけど? いいの?」
「構いません、思う存分『高い高い』してあげて下さい」
「そう? じゃあ遠慮なく」
「ん? って、ちょ、おいっ!?」

突如エヴァンジェリンさんの身体に巻きつく竜の尾。身動きの取れなくなり怒りを露わにして怒鳴りつけ様としたその瞬間、ふっとエヴァンジェリンさんの身体が浮き上がり竜の尾が空へと伸びて行く。

「ほーら、飛行機だぞー高い高ーい」
「貴様あああぁぁぁぁぁ……!?」
「エヴァの記憶を空へ預けに逝くよ!」
「預けんでいいぃぃぃいっ!? というか感動のシーンを汚すなっぁあぁああ!? 降ろせぇっ! 降ろっっっ!?」
「ビビちゃん……」

目尻に涙を溜めてあのキャラの名を呟くお嬢様、際限なく伸び続ける竜の尾、そして上空から聞こえるエヴァンジェリンさんの叫び。空を飛ぶ事が出来るエヴァンジェリンさんなら、耐えられるのでは? と思っていたのですが。
私も昔はああやってよく『高い高い』してもらってましたっけ。きちんと身体が固定されているので危険がなく、何度も楽しめる遊びとして重宝していました。今思うと何故この様な遊びにはまってしまったか、少々疑問に思いますが、馴れてくると楽しいんですよね。

「……刹那さんこんな遊びしてたんだ」
「ええ、タマと一緒に何か楽しい事はないかと模索して、試したのが始まりでしたが」
「ええなーせっちゃん、昔から最終形態タマと遊べて」

それに関しては当時様々な問題もありましたし、お嬢様もこちら側の事は知らなかったので、としか。いくら言葉を並べたとしてもただの言い訳にしかなりませんが。

「さ、皆さん。エヴァンジェリンさんが『高い高い』されている間に」
「ええの? ホンマに行ってもええん? 全力でもふるえ?」
「どうぞ」

ようやく、ようやくだ。ある意味で私の『夢』と言ってしまっても差し支えない、究極と至高の競演が今、今ようやく見る事が出来る。長かった……本当に長かった。お嬢様がこちら側に関わる日はないと思い、諦めていた夢。

「さあ! 遠慮しないで飛び込んで来なさい!」
「わー」
「え、えっと……わー?」

お嬢様に手を惹かれてアキラさんもタマに向かって行く。いつの間にか、カモさんがタマの身体に乗っていましたが、毛皮の色が白という共通点がある為か発見が遅れてしまいました。それに、何と言いますか……空気っぽいですし。

「くっ、出遅れてしまいましたか。絡繰茶々丸出撃します」
「えーっと、流れ的にやらないと駄目な訳?」
「それは神楽坂さんにお任せします」

お嬢様とアキラさんと茶々丸さんにもふられて、通常の数倍はふにゃけているタマ。されるがまま、抵抗する事なくあらゆる部位をもふもふされて幸せそうだ。お嬢様もあっちをもふもふ、こっちをもふもふと忙しい。ああ、癒される。

「ネギ先生はどうですか?」
「ぼ、僕ですか? い、いいんでしょうか?」
「もふもふ好きに悪人はいない、かもしれない! ぬいぐるみを弄ぶ様な感じでカモン!」

と、タマに促されおずおずと近づき恐る恐る左前足を一もふ。毛並みの肌触りを確認する様にゆっくりと撫でている。しばらく探る感じでもふもふした後、パアっと表情が明るくなり遠慮する事なくもふもふ。やはり、ネギ先生くらいの子は無邪気なくらいが丁度いいですね。

「ああっ、ああっ! マスターに邪魔をされ機会を逃してきた私ですが、このあまりの幸福感に思考回路がショート寸前! ぁっ、んあっ! ……おかしいですね、またみなぎってきました」
「タマでもふもふしながらお昼寝とかしたら、気持ち良さそうだよねぇ……」
「それや! アキラちゃん今ええ事言うたえ!」

確かに、タマでもふもふしながらする昼寝は凄く気持ちいい。あまりの気持ち良さに10秒と掛からず眠りに付いてしまう程だ。タマの巨体に全力で抱き付きながら、おかしな事を言っているガイノイドさんがいるみたいですが、何がみなぎってきたのかと。

「……エヴァンジェリン殿が降りて来ないでござるなぁ」

実はもふもふされている最中もずっと尾が伸び続けていた訳なんですが。それはともかくとして、今のエヴァンジェリンさんがその気になれば、タマの自慢である竜の尾と言えども振りほどく事は可能だとは思うんですが、その気配が全くない。……自分で差し向けておいてなんですが、少し気の毒になってきたので。

「タマ、そろそろエヴァンジェリンさんを降ろしてあげて下さい」
「え? もういいの? これからぶんぶん振り回してそぉい! する予定だったんだけど」

それはちょっと酷いと思いますが。元々、エヴァンジェリンさんの言った通り、タマが最終形態に変身するきっかけを作ったのは彼女ですからね。

伸ばしていた時の倍以上の早さで縮んでいく竜の尾。徐々に見えてきたエヴァンジェリンさんは、心なしかぐったりとしている様に見える。

「楽しかっただろ! また今度『高い高い』してやるからな!」
「……せんでいい」

何でも、自分で飛ぶ時やタマの背に乗って飛んでもらう時とは、感覚が違い過ぎて気持ち悪かったらしい。馴れると楽しいんですが。
竜の尾の拘束が解かれ、力無くタマにもたれかかってもふもふ。今回の様に複数人がもふもふしている所は初めて見ますが、何と言うか混沌としてますね。タマのふにゃけ具合もいつもよりひどい。

「桜咲さんは行かなくてもいいのアレ?」

そう言って神楽坂さんが『もふもふパラダイス~混沌編~』を指差す。恐らく、以前の私とお嬢様の関係の事を気にして、気を使ってくれているのだろう、優しい人だ。

「……今はこの光景を見ていられるだけでいいんですよ、神楽坂さん」

確かに、魔法がバレてしまう以前と比べれば、私とお嬢様の仲も格段に良くなっているとは思う、そしてそれがとても幸せな事だとも思います。
傍から見れば仲が良く見えるのかもしれませんし、それは間違ってはいない。ですが、やはり私は……肝心な所で一歩引いてしまっている。あの時踏み出せた一歩が今は踏み出せない。あの頃の様にお嬢様と過ごしたい、そう思っていても思考の奥でチラつく『あの光景』と『私の身体』。

以前、クウネルさんに言った通り、有事の際には力を出し惜しむ事はしないでしょう。例えそれが禁を破る事になったとしても。……もしかしたらそういった考えが、今度、また今度と出すべき一歩を踏み止まらせているのかもしれない。我ながら女々しい事この上ないが。
例えば、例えばもし私がお嬢様に自身の秘密を包み隠さず話した所で、お嬢様は拒絶する様な事はしないでしょう。それでも、それがわかっていてもやはり怖い。世の中には絶対と言う物が無いと理解してしまっている事が、恐怖に繋がってしまう。『もしも』を考えずに一歩踏み出せたのならと、思い嘆く事だって何度もあった。

『せったんのペースで頑張りなさいな』

と、タマは言ってくれました……が、私はその言葉に甘えていたのかもしれない。今出来ない事がその時になって本当に出来るのか? そう考えてしまう時だってある。今の私は出来ると胸を張って言えるのだろうか。

「……っ!? えっ!?」

思考中で反応する事が出来なかったが、この身体に巻き付いているのはタマのっ!?

「ちょ、タマっ!」

静止を促す為に荒げた声もスルーされ、あっと言う間にタマの所へ引き寄せられてしまう。途中で、尾の拘束が解かれ引き寄せられた勢いのまま、タマの身体に持っていかれぽふっと衝撃を感じさせない柔らかい感触。

「せったんがー、このかと一緒にもふもふしたいーって顔してたから、ついやっちゃったんだ」
「え、そうなん? むぅ、せっちゃん難しい顔していつまでも、もふもふしに来んから何かあったんやないかと心配しとったら、そんな事考えてたんやね。ほらー、一緒にもふもふー」
「タ、タマァっ! いや、ちょ、お、お嬢様っ!?」

いや、確かにお嬢様と一緒にタマでもふもふしたいとは思っていましたが。今は―――

『どうせまた難しい事考えてたんだろー? そんな事よりもふもふしようぜ!』
『しかし……』
『せったんはせったんのペースで、つまりはそういう事さね。多分、このかの事でまた悩んでたんだと思うけど。せったんの身体の事は、ある意味一生物の事だろ? 悩むのなんて当然なんだよ』

一生物、確かにそうですね、私が私である限り付いて回る問題ですから。
お嬢様にこちらの事を秘密にしていた頃は、実を言うと安堵している部分もあったんです。こちらに関わらないのなら、私の秘密もお嬢様に知られる事はないんじゃないかと。
ですが今、お嬢様はそれを知ってしまっている。この事で私には選択肢が出来た、私の事を話してしまう事と話さない事。ですが、過去の事もあり、臆病になってしまっている私には話すという選択肢を、選ぶ事が困難になってしまっている。タマの存在がそれを和らげてくれてはいますが。

『タマは、ご自身の身体の事で悩んだ事はないんですか?』
『んー、そりゃまあそういう時もあったけど、今ではこの通りでありますよ』

やっぱりタマにもあったんですか。こうして見ている分には、そういう時があったとは思わせない堂々っぷりですが。

『それらを克服するきっかけ、というのがあったんでしょうか?』
『きっかけ? きっかけはせったんかな? 詠春おじ様やエヴァに聞けばわかると思うけど、当時はあんまり最終形態になる事なんてなかったんだぜよ。たまたま、そうたまたま落ち込んでるせったんを元気付けるのに、最終形態を晒したのが決定的だったのかねぇ?」

そういえば、そんな事もありましたね。

『だってせったん、最終形態の俺を見て瞳を輝かせながら笑顔を浮かべてたんだぜ? そんなの見てしまったら、何か悩んでいたのが馬鹿らしくなったというか……まあそんな感じかな』

……懐かしくも恥ずかしいお話です。ですが、私がそれを克服するきっかけだと言われたら嬉しい物ですね。あの頃の私が心を開く位ですから、相当インパクトがあったんでしょう、もちろん良い意味で。
こうして思い出してみると、私がもふもふ好きになったのもその辺りの頃だった気がします。

『ま、だからもふもふに関しては、せったんが一番の権利を持ってるって事なんだけどね』

そしてタマも私の翼をもふもふする権利を持っている訳なんですが。

『俺に取ってのきっかけがせったんだった様に、せったんが克服するきっかけもちゃんとあると思うよ。このかに話すか否かで悩んでいるのなら、このかだとは思うけど。本人はほら、待ってるって言ってくれてるんだからさ、せったんは焦らず自分のペースで。話したいって気持ちがあるのなら、それが今よりも大きく、もっと強くなった時に、な』

タマの言う通りお嬢様に打ち明けることが出来たなら、この複雑な想いも感情も、そして過去の事も克服出来るでしょう……打ち明ける事が出来たのなら。全ては私次第ですが。
待っていてくれるというお嬢様の言葉に甘え、いつまでも答えを出せずに、いや出さずにいれば過去を克服する事は叶わない。タマの自分のペースでという言葉に甘えて、自分から動こうとしなければ同じく叶わない。

一歩を踏み出すのはとても怖い。今の私がそう感じている様に、その時のお嬢様もそうだったのかもしれない。それでも、私が立場を優先しお嬢様に対してそっけない態度を取っていた時だって、お嬢様は歩み寄ってくれた。
身体の事に対する不安もある、護衛という立場にいる責任もある。ですが、あの時お嬢様が歩み寄ってくれた様に、私も今よりも前へ一歩踏み出してみたい。だから―――

「ありがとう―――“このちゃん”」
「え? せ、せっちゃん今、“このちゃん”てっ」

これが今の私が踏み出せる精一杯の一歩ですが。それでも、私が“いつか”を向かえるための大事な一歩。
タマの柔らかい身体に顔を埋めながら微笑む、だらしなく緩んでいると思われる顔を見られてしまったら恥ずかしいですしね。

「もっかい! せっちゃんもっかい!」
「え? 何がでしょうか? それよりも一緒にもふもふしましょう」
「せっちゃーん!?」
「ふぇ?」

お嬢様とその隣で寝そうになっていたアキラさんを巻き込んでもふもふ。もふもふする度にタマの身体が僅かにびくんと反応するのが面白い。

「にゃーん」
「ちょっと思ったんだけどさ、何でタマって鳴く時『にゃーん』なの?」

気持ち良さそうな鳴き声を上げたタマに、神楽坂さんが疑問をぶつける。それは私も気になっていた事だから、何故『にゃーん』なのか聞いてみたい。

「えーとー、それはー、昔せったんの前でー全力の鳴き声を披露したらー、泣きだしちゃったからー。それ以来せったんを怖がらせない為にー、最終形態でも『にゃーん』と鳴く様にしてるーってわけー」
「ほぇー、せっちゃん泣いちゃったんやー」

そ、そうだったんですか? 如何せん私の記憶にはそういった事があったという記憶が無いので、本当かどうかはわかりませんが。

「いやー、泣き出したせったんをどうやってあやそうかと、その時は焦りまくったもんだよー、にゃふんっ!」
「ククク、何だ桜咲刹那。貴様も可愛い頃があったんだなぁ? 今からでは想像も付かんよ」

さっきまでぐったりしていたエヴァンジェリンさんが、タマの背に飛び乗ってこちらを見下ろしながら、面白い物でも見つけた様に言う。

「そうやって幼少時からタマちゃんに様々な印象を植え付けた結果、もふもふ権利者として君臨していると。さすがむっつり剣士刹那さん、やる事が違いますね。……羨ましい」
「……茶々丸さん、今日は所により雷が降る恐れがあるので気を付けて下さい」

誰がむっつり剣士ですか。どの辺りがむっつりしているのかと。貴方がオープン過ぎるんですよ。

「まさか、ガイノイドだから雷が効くとでも思っているのでしょうか? ただのロボとは一味違うこの絡繰茶々丸が対策をしていない筈がありません。私には最強の盾があるのですよ、そう―――マスターと言う」
「前々から思ってはいたんだがな、一度本格的に教育してやろうか? この馬鹿従者めが」
「性教育でありますか!?」
「口を開くな馬鹿猫」
「……この姿でも猫扱いなんでござるなぁ」

タマですからね。そういえば、ネギ先生も神楽坂さんも楓も、タマの最終形態を見ても割と普通の反応……とは言い難いですが、さほど驚いた様子でもないですね。
タマの身体をもふもふしつつ、首だけ動かして神楽坂さんに視線を向ける。最終形態もふもふは、一度やり始めると中々抜け出せない気持ち良さがありますから、動きたくなくなるんですよねぇ。これがニートへの誘いかもしれません。

「神楽坂さんは、最終形態を見て何か思わなかったんですか?」
「へ? あー、や、ほらタマだし? いきなり爆発したり人から猫になったりする人だから」
「何だかなー、一応最終形態な訳だから、少しはビビったりしてくれる方が嬉しいんだけどねー」

怖がらせたかったんですかタマ? まあ、最終形態の姿を見た事がある人もそんなに居ないですしね。そもそもがおいそれと晒す様な姿ではありませんからね、最終形態なんですから。……別にもふもふを一人占めしたいとかそういった気持ちはありませんよ。

それからしばらくはタマの身体で静かにもふもふ。神楽坂さんはタマの顔や咽を撫で、楓は竜の尾にちょっかいを出して遊んでいる。
ふと、とろけそうな表情でもふもふしていた(恐らく私もでしょうが)お嬢様が、何かを思いついた様に顔を上げ。

「なータマ? ウチ、ちょっとタマに乗って飛んでもらいたいんやけど、ええかな?」
「いいですともー」
「あ、そ、それなら私も乗ってみたいのですが……」

あっさりと了承し、もふもふしていた皆さんが離れた後、お嬢様と茶々丸さんが背に乗り込んだのを確認してゆっくりと立ち上がり、巨大な翼を羽ばたかせ一気に飛翔。

「ちっ、本来ならば私が乗っていたものを」
「僕も乗ってみたかったです……」
「頼めば乗せてくれると思いますよ?」

タマ自身飛ぶのは好きだと言ってましたし、外では迂闊に姿を晒して飛ぶ訳にも行きませんからね。四人か五人程度なら無理しなくても乗れる程の巨体ですから、皆さんを乗せて飛んだりもしてくれるかも。
以前、出来る事ならキャシーと並んで飛んでみたいとも言ってましたが、あれ程の広さがある場所ならば許可してもいいかもしれません、あそこに一般人が来るとは思えませんし。

タマに視線をやり、別荘内を凄まじい速度で縦横無尽に飛び回っている姿を見る。あの速度でも乗っているお嬢様が無事なのは障壁のおかげでしょう。まあ、障壁が張られているのに何故か風を感じる事が出来るんですけどね。

「凄い凄ーい! 昔、お父様にお姫様抱っこで走ってもろうた時より――」
「マスターより――」

―――“ずっと速い”―――

お嬢様と茶々丸さんがそれを言った瞬間、空気が凍りついた様に静まり返ってしまった。
何故か、脳裏に長が涙を流しながら憤怒している姿が浮かびあがり、隣では俯きながらも震え出し何かを堪えているエヴァンジェリンさんが見える。

「ちゃ、茶々丸はいつもの事だからいいとしてもだ、近衛詠春が聞いたら本気で泣くぞアレは。というか私は女だからいいが……」

どういう事なのか理解は出来ませんが、先程長が脳裏に浮かんだ事関係があるのだろうか? 理解出来ない方がいいのかもしれないと一人で勝手に納得し、タマが飛翔する姿を眺め続けた。





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