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朝霧先生(ry 55話 寿司と変態と私(アキラ)でgdgd。

朝霧先生の様子がおかしい。や、おかしいのは今に始まった事じゃないんだけど。
皆で最終形態のタマにもふもふした後から……正確にはこのかさんと刹那さんの距離が縮まってから、少しずつ様子が変わったのは確かだ。

だって、あの朝霧先生が―――

「こっちの書類はしずな先生に、こっちはタカミチで、こっちは……内容的にじいちゃんだな」

―――仕事してるんだもん。

皆でもふもふした後、またネギ君や明日菜さんを交えて瞑想。それが終わってネギ君と明日菜さんに、魔法や気の事について少し教鞭をふるって一時解散。普段よりも朝霧先生が教師らしく見えたって言ったら、何か疲れたような顔してたけど。

次の日のHRにネギくんから修学旅行の話が出る。委員長の雪広さんはクラスの総意って言っていたけど、事前に朝霧先生から、色々と複雑な事情も関わっているって聞いてた。多分、このかさんに関わる事なんだろうと思う。クラスの皆がはしゃいでる中で、刹那さんが複雑な表情を浮かべていたから、ね。

一応、行き先の変更は提案したって言っていたけれど、クラスの総意とその事情があるから却下されたみたい。京都に行く事になるっていうのは、結構前から決定に近い状態だったみたいだから、その辺りも関係あるのかな?

私としては友達が困っているのなら助けたい。だけど、今回の件は麻帆良の外で起きる可能性のある事だから、朝霧先生的にはあまり危険な事はして欲しくないそうだけど、それも今更。私が私で居る限りそれを見過ごす事なんて出来ないから。
本人にそれを言うと諦めた様に「無理だけはしないで、やばそうになったらとっとと逃げろ」って忠告を貰ったけど。どれくらいの危険度なのか把握出来ていないから、余計に心配してるみたいだ。

で、その過保護で心配性の先生は、溜まっていた書類(本人曰く、溜めたくて溜めてしまうのではない、溜まってしまうのがニートらしい)を整理するのに勤しんでたり、何故か私の部屋で。

「ねえ、朝霧先生」
「んー?」

忙しそうに手を動かしながら返事をする朝霧先生。正直言っちゃうと、普段が普段だからこの光景に違和感が。

「どうしてここで仕事してるの?」
「んー、なんとなく居心地がいいから」

居心地がいいって……や、今日はもう部活も終わってるし、勉強も予習復習済ませてあるからいいんだけど。

「私っていうか、生徒に見られたらダメなのとかあるんじゃないの?」
「そういうのはもう終わらせてあるから大丈夫」

それならいいんだけど。ん、いくら朝霧先生でもその辺りは弁えてる……よね?

特にする事もなく暇を持て余してたから、二人分のお茶を淹れて朝霧先生が差し入れてくれた醤油煎餅を齧り、滅多に見れない朝霧先生の仕事風景を眺めてみる。見た目中学生くらいの人が、スーツ姿で書類を整理してる光景って何かシュール。10歳のネギくんにも同じ事が言えそうだけど、ネギくんは普段からちゃんと仕事してるもんね。

普段のだらけっぷりが嘘みたいな速さで淡々と書類を片しているのを見ると、学園でもそれくらいやればいいのにと思ってしまう。……勤務時間外にする方が真面目ってどうなんだろ。

「先生さ、アキラに言っておかないといけない事があるんだよ」

結構あった書類も残りが一枚になったところで、いつもの軽い感じじゃなくて、神妙な雰囲気を出しながら先生が口を開く。真面目な話、なのかな?
お茶を飲んで一息付き、いつになく真剣な表情を浮かべて。

「先生な、おっぱいもお尻も好きなんだけど、実は脇も好きなんだ」
「―――は?」

な、何を言い出すのかと思えば。思わず間抜けな声が出ちゃったよ。その、ただ事じゃない! みたいな雰囲気を出しながら変な事を言うのはやめて欲しい。

「綺麗な脇も好きだし、ちょっと毛が生えてたりしてても全然イケる」
「いきなりそんな事カミングアウトされても、反応に困るよ……」

そういった好みは人それぞれだから、好きなら好きでもいいんだけど、言われた方は何て返したらいいのかわからない。朝霧先生は突然変な事を口にするから困る。

「まあ、そんな訳でだ。今日別荘に行ったら先生の新しい脇を披露しようかと思って」
「わざわざ別荘に行ってまで披露する脇って何っ!? そんな訳ってどんな訳っ!? 脇好きをカミングアウトしたのと、先生が脇を披露するのは関係ないよねっ!?」
「今日のアキラは突っ込みが激しいな。大丈夫、先生の新しい脇はいずれアキラの脇になるから」
「大丈夫じゃないよぅ! おかしいよね? 先生の脇が私の脇になったらおかしいよね?」

最後の一枚を処理しながら淡々と脇脇言う先生。なんか私も無駄に熱くなっちゃってるけど、これは仕方ないと思う。

「あ、脇じゃなくて技だったわ」
「……わざとでしょ?」
「技だけに?」
「全然上手くないよ」

少し頬を膨らませてむくれてみる。そんな私の様子が面白かったのか、最後の書類を片付けた瞬間に、手を伸ばして私の頬を、指でプニプニと突付いてちょっかいをかけてくる。

「いやーほら、アキラって水泳部だろ? 水着と言えば脇! とか考えてたらつい」
「つい、じゃないから。っていうか、水泳部水着で脇とか……先生絶対に見学とかしに来ないでね」
「来るなと言われると行ってしまうのがニートの性」

ニートは関係ないと思う。でも、確かに朝霧先生に「来ないで」は逆効果だったかも、先生スケベだし。
2年生の時はそうでもなかったけど、ここ最近のセクハラにはちょっと目に余る物があったりするから、他の部員の子に迷惑が掛かりそう。
どうせ不意打ちで来ちゃうんだろうけど、その時は全力で朝霧先生の奇行を阻止しなくちゃ。

私の頬でプニプニしてたのを止め、処理した書類を何枚か毎に束ねてピンで止める作業を始めた先生。

「そういうのって書類じゃなく、パソコンとかでやっちゃわないんだね」
「あー、何と言うか、データだけ残しておくと不慮の事故で消えてしまった上に、復元不可能な事態になった時困るからな。そういう時の為にこうやって書類としてまとめておくんだよ。ちなみに、先生は主に書類仕事しかやらない」
「何で? 先生ソッチも結構いけるんでしょ?」
「俺がパソコンを使い始めると……他の事がやりたくなって仕事が進まなくなるから、やらせてもらえんのよ」

納得、朝霧先生だもんね、何か簡単に想像出来ちゃう。

「さて」

書類をまとめ終えたところで、やおら立ち上がり私に視線を送ってくる。お腹でも空いたのかな? 今日は私が作る事になってるんだけど……と、朝霧先生の食事的生命線ルートを頭で辿ってると、いきなり右手を振り上げて。

「ちょっとじいちゃんとこ行って来る」
「えっと、晩御飯はどうするの?」
「んー、ちょっと待っててくんろ。多分、30分も掛からんと思うから」

そう言って転移魔法を使って消えちゃった。うーん、下ごしらえとか済ませておきたかったんだけど、仕方ないよね。いざとなったら、茶々丸さんの所で……あ、あれ? これはひょっとしてまずい? 何だか朝霧先生みたいな思考パターンになってる様な。大丈夫だよね大丈夫だよね? うん、アキラは大丈夫!





そしてきっちり30分後。

「アキラのお股からうわらばっ!?」
「そういうセクハラな登場は「めっ」って言ってるのに」

胡坐をかいて座っていたのが悪かったのか、組んでいた私の脚を無理矢理広げて、嫌な登場の仕方で現れた朝霧先生の頭を左右の拳で挟みこんでグリグリ。悪い子の躾にはグリグリが良いって、葛葉先生が言ってたからやってみた。反省はしない、うんしない。

「お゙お゙お゙お゙お゙ぉぉぉ……ごみんなしぃ!」
「ん、よろしい」

お仕置きはこのくらいにして―――と、朝霧先生がいきなり身体をこっちに向けて来た、顔がちょっと近い。

「寿司食いに行こうぜ寿司!」
「お寿司? ……そんなっ! あれだけ「アキラの作るご飯は美味い!」とか「アキラは良い嫁さんになれるな!」とか調子の良い事言っておいて……私の事は遊びだったんだね!」
「ち、違う! お、俺はアキラのご飯を―――」
「もういい! 言い訳なんか聞きたくない!」

いつもの三文芝居。まあ、晩御飯用意する気があった身としてはこれくらいの茶番くらいはいいよねっと―――そう思っていた時期が私にもありました。
がちゃり、と音を立てて開かれるドア、その向こうにはカメラを構えた―――

「おお、修羅場修羅場」

3-Aが誇る(ちょっとだけ迷惑な)パパラッチ朝倉。部屋を出て行こうとする私と、私の脚に縋り付いている朝霧先生。どう見てもシャッターチャンス、パパラッチからは逃げられないの?

「いやいやいや、これはこれは。たまたま通り掛かったら、何やら大きな声が聞こえてきたんでドアを開けたらご覧の有様。やっぱりスクープの神は私を見捨ててなかった!」

もの凄い勢いで誤解してるね、この人。最近覚えた防音の結界張っておけば良かったかな? あと朝倉フラッシュがちょっとしつこいくらいに眩しい。

「スクープ(笑)」
「ちょ、センセー馬鹿にしてんの? この状況どこからどうみても痴情のもつれが原因で、愛想を付かした嫁さんが実家に帰ります宣言して出ていこうとしてるのを、止めようとしてる駄目亭主にしか見えないんだよ?」
「そんな「どや顔」で言われてもねぇ、この程度日常茶飯事だからなあ?」
「うん、何ていうかノリ?」

茶々丸さんやこのかさんなんて、こういうのはそれこそ日常茶飯事だし。刹那さんもたまーにやってるよ? 朝霧先生の無駄に強い影響力の所為だけどね。これはただのスキンシップだから。

「そんな事言ってアレなんでしょ? 教師と生徒のイケナイ関係、だったりするんでしょ?」
「ただ晩飯の事で茶番してただけで、そんな認定受けるとか……」
「朝倉って相当ネタに飢えてたんだね……でも、ネタを見つけても捏造したら駄目だよ?」

朝倉の書く記事はちょっと大げさに書かれている事が……結構あるから、少しは当事者に配慮しないとね。とは言っても、個人のプライバシーに関わる様な記事はなるべく、なるべく! 書かない様にしてるらしいけど。

「ま、言われなくてもわかってるよ。で? 実際の所どうなの?」
「どうって聞かれても返答に困るよ?」
「俺は贔屓する先生だからな! つまりはそういう事だ! わかったか朝倉?」
「それ、教師としては駄目駄目だよね。んじゃ、あの大きな声は何だったのさ?」
「寿司食いに行こうぜって話から派生した、副担任と教え子の茶番劇」
「寿司!? 大河内だけ!?」
「うむ、アキラだけ」
「……私は?」
「朝倉、先生は差別する先生だからな? つー訳で、おめぇの寿司ねぇから!」
「これはひどい!」

確かにひどい、というかちょっとだけ予想外。朝霧先生の事だから朝倉も連れて行くのかなって思ったんだけど、何かあるのかな?

「先生?」
「ん? ああ……まあそのなんだ? 今回のは関係者以外男割り、じゃなくてお断りなんだよ。だからアレだ、機会があったらその時に奢ってやる」
「ホント?」
「かもしれない」
「だよねー。っていうか、財布このかに握られてるんだっけ先生? こりゃ絶望的かな」

金銭の管理まで人任せとか、本当に社会人とは思えない、らしいと言えばらしいけど。朝霧先生が自由に使えるお金は大抵お酒で消えちゃうからね。

「寿司の事はひとまず置いといて、実際の所大河内ってセンセーの事どう思ってるの?」
「唐突に何を言い出すのかと思えば、そこまでしてネタが欲しいかパパァルァッチィィッ!」

本当に唐突だ。いきなりそんな事を聞かれても……あれ? 別に困らないや。

「えーと、手の掛かる弟みたいな感じかな?」
「オネィーチャーン!」
「いやいやいや、年下に弟扱いされてるんだから少しはダメージ受けなよ」
「俺は上下関係に置いても底辺に立つニートだからな、この程度は慣れっこなんだよ」

副担任なのに副担任らしくないし、師匠なのに師匠っぽくないし、タマでいる時は本当にペットだもんね。それに従者の刹那さんの方がマスターに見えるくらいだから。

「何だかなー、もっとこう熱くなるようなネタが欲しかったんだけど」
「―――ネタが欲しいのか?」
「え?」

突然低い声で囁くように喋り始めた先生。今の内にドア閉めといてっと。

「―――欲しければくれてやる」
「マジ?」
「マジだ。3-Aの教室にいつも空席になっている席があるだろ? あの辺激写してみ。前にバーベキューした時取れた心霊写真の子が写るはずだから」

それってもしかして、謎の幸薄少女の事かな? 前にDQMで朝霧先生が代理で私と対戦した『バイオハザードパーティ』の。確かにあの席に近づいた時ぼんやりと『何か』いるかも? みたいな感覚があったけど。

「ちょっ! それマジネタ!? ガチ? ガセじゃないよね!?」
「マジでガチでウホッでガセじゃない。信じる信じないはおまいさんの自由。ただ、何と言うかその子、相坂さよって言うんだけどさ、滅茶苦茶写真写り悪いんだよ。だから変な写り方しても騒ぐなよ? あ……ネタ提供するとかいっといてアレだけど、これ記事にするの勘弁な? 3-A限定ならある程度のネタバレはおk」
「記事にしたら駄目ねぇ……まあ、いっか。取り合えず明日にでもやってみるよ」

記事にしたら駄目って言われたのにホクホク顔で部屋から出てった朝倉。大丈夫かな?

「でも、どうして突然そんな事を?」

幽霊さんだから色々あるのかな?

「相坂もエヴァと同じで修学旅行行った事ないからな、副担としては行かせてやりたい訳で……きっかけになればいいかなと」
「でも学園結界から出れなかったら意味無いよね」

簡単には聞いてたけど、幽霊さんが学園結界を越えるのは難しいんじゃないかな?

「それはアルとじいちゃんとエヴァに丸投げ」
「アル……ああ、自称朝霧先生のパパだったっけ」
「いつのまにかアルが俺のパパンになってる件」

あの襲撃と再会のあった日にクウネルさんが言いふらしてた。茶々丸さんとこのかさん辺りは完全に騙されてると思う。

「あ、確か朝霧先生の記憶を封印した犯人の一人かもしれないって、刹那さんが」
「あー……うん、俺もおぼろげにだけど記憶の隅に引っ掛かるもんがあるわー。ま、どうでもいいけど」

どうでもよくは無いと思う。どうして記憶の封印なんて掛けたのか、理由なんてさっぱりだけど、それでも楽しい事も悲しい事も全部含めて朝霧先生の記憶だと思うから。本人が気にしなさすぎて困る。

「さて、待たせちゃ悪いしそろそろ行こうかね」
「そうだね、でも朝霧先生? どうしてお寿司なの? 私は別にいいけど……あ、寮長さんに外出許可出しておかないと」
「それはさっき連絡入れといたから大丈夫」

そうなんだ、随分と準備のいい事で。あ、でも近場にお寿司屋さんなんてあったかな? 麻帆良は広いから色々なお店があるけど、確か場所的には遠かったと思う。それに、この遅い時間だと世間様の目がちょっと怖い。

「どこのお寿司屋さんに行くの?」
「や、今日は寿司屋に行くんじゃないんだよ。こないだの雪さんがさ、あん時の件で謝罪に来るって言ってただろ?」

あっ! あの時の九条雪さん(26)だったかな? 見た目は先生と同じで小柄だけど、胸が凄く大きい。
さっき朝霧先生が学園長先生の所に行ってたのも、九条さんが来てたからだったんだ。

「でも何でこんなに遅い時間なんだろう?」
「それは本人に聞かんとわからん。んで、謝罪と言えば手ぶらで来る訳にも行かないって事で、寿司を持ってきてくれたんだよ、しかも特上!」
「特上……それは全力で美味しく頂かざるを得ないね。でも、私がお邪魔してもいいのかなぁ?」
「なあに、その辺の事は気にしなくてもいいだろ。謝罪はもう受けてする事ない上に、結構量あるから俺とじいちゃんと雪さんだけじゃ食べ切れそうにないからな」

それじゃあお言葉に甘えてお邪魔しちゃおうかな。あの人ともお話してみたいし、お寿司も食べたい。うん、お寿司お寿司。

ちなみに、このかさんと刹那さんは来ないみたい。朝霧先生のプレハブ猫ハウスで友情を深め合っているとか。刹那さんだけに食べさせてあげたい料理があるって、このかさんも言ってたし、今頃頑張ってるんだと思う。ファイトだよこのかさん!

「それじゃあ、適当に準備していぐぅ?」
「うん、いぐぅ」
「…………」
「…………」
「感染確認」
「やあああだあああっ!? 何で? 何で? どうして私こんな事っ!」
「普段から「いぐぅ、いぐぅ」言ってた甲斐がありましたな! さ、学園長室にいぐぅ? いきます?」
「いっちゃいま―――はっ!?」

あ、危ない危ない、危うく乗せられるとこだった。最近は私が主導権を握ってたから油断してたのかも。今度、隙を見つけて弄っちゃおう、主にタマを。

「チッ、踏み止まったか。だが俺は諦めない!」
「諦めてっ! 私は絶対に屈しないから!」

そんなやり取りをしつつ、おでこに人差し指と中指を当て、お決まりのポーズを取っていた朝霧先生が転移魔法を発動させる。いつも思うけど、便利だよね転移魔法って。








「上から来るぞ! 気を付けろ!」
「下からで本当にすみません、こんな師匠で本当にすみません」

何をするにも子ネタを挟む朝霧先生に、ちょっと呆れながら恥ずかしがりつつ頭を下げる。修行の時は割と……『割』とまともなのに、どうしてこういう時は自重出来ないんだろう?
事前に連絡しておいたという事で、先生と私が突然現れても、学園長先生と九条さんはにこにこと微笑んでいるだけだった事に、ホッとしちゃった。

「裕香の奇行は今に始まった事じゃないからのう。アキラちゃんも気にしたら負けじゃよ?」
「いえ、ここは弟子として気にしないと負けかなって思ってます」
「……弟子?」

『弟子』という言葉を聞いて首を傾げる九条さん。雰囲気は大人の女性な感じがするのに、こういう仕草は失礼ながら凄く可愛いって思っちゃった。
九条さんはあの時と違って着物じゃなく、スーツを着ていてとても似合ってる。

「スーツなのにスカート履いてないとか、生殺しですよね、そうですよねー」
「またそこに反応するのか……」

本当にごめんなさい。変な事を言っている朝霧先生は、ジロジロと不躾な視線を九条さんに送りながらちょっと不満顔。でも主な視線は九条さんの豊満な胸に注がれている。少しは抑えて欲しいと思う弟子心。

「えと、初めまして。朝霧先生の弟子をやらせて頂いている、大河内アキラです」
「初めまして、裕香の元御主人様の九条雪だ」

元御主人様って部分に少し力が入ってたのは気のせいじゃないよね? やっぱり気にしてるのかな?

「寿司! 寿司!」
「落ち着きなさい裕香、慌てなくとも寿司は逃げんぞい。それでは雪ちゃん頂いてもいいかの?(チラ」
「だからこの歳で、ちゃ、ちゃん付けはやめて欲しいんですけど……はあ、言っても聞かない類の人っぽいですし、呼び安いように呼んで下さってもいいです……」
「おっぱい雪さん」
「……いくらの軍艦巻きのいくらだけ食べたりした後に―――もぐぞ?」

ちょっとだけ威圧され『ひぃっ!?』と小さい悲鳴を上げながら縮こまる先生。やっぱり、幼い頃からの上下関係みたいのは、記憶が封印されてても身体が覚えちゃってるのかな? 

「雪さんにいくらが全滅させられる前に頂きます!」
「ちょ、朝霧先生はしたないよ」

箸の動きが無駄に速過ぎる、なにこの人。もしかして一人でいくらを全滅させるつもりなの? 等と思っていたら、いくらだけじゃなくマグロにイカ、海老に蟹にも箸を延ばしている。もうちょっと落ち着いて食べようよ。

「うまい! タダで食える寿司程美味いもんはにぃ!」
「ほっほっ! そうじゃのう、そうじゃのう。大トロよりも中トロの方が好きなわし歓喜」

自重しない、この二人全然自重しない。ちょっと視線を外せばその隙に減ってる、もしかしなくても朝霧先生と学園長先生だけで食べ切れちゃったりするんじゃ……よし。

「私も頂きます」
「どうぞ、遠慮せずに食べてくれ」

テーブルの右側で食べ荒らしている二人の分とは別に、九条さんが別のを用意してくれていた。うん、あの二人は取り合えず放っておいて、九条さんとゆっくり食べよう。―――ん、おいし。余りの美味しさに思わず頬が緩んでしまう。

「はあ……しかし、学園長殿も裕香も無駄に頑固で困るな」
「二人が頑固?」

箸の動きが捉えられない程の動きで攻防を繰り広げている二人を見ながら、九条さんが溜め息混じりにお話を振ってきてくれた。でも九条さんの箸の動きも止まらない。

「本来なら寿司の一つで片付けられない問題の筈なのに、戦闘のあった区域の復旧やその他諸々に対する慰謝料などは、一切受け取ってくれないんだよ」
「嘘ぉ!? 貰える物なら何でも貰いそうな二人なのに!?」
「おま、んぐっ、ひつれいなやふだな、あひらたんよぉ」
「口に食べ物を入れたまま喋らない」
「ひゃーへん」

もう、何このお子ちゃま先生、顔におべんと付けっ放しだし。うぅ、恥ずかしい、さすが朝霧先生恥ずかしい。

「そももも、むぐっ、こほん。そもそも区域の復旧はその日の内に済ませておるからのう。ボーナス出すぞーの一言でやってくれたわい。それに、裕香の件に関しては誤解があったとはいえ、容易く入り込まれたわしらの詰めの甘さにも責任がある。裕香本人も、轟くんとやらの事はもうどうでもいいと言っておるからのう。彼の処罰は九条家で下されたとも聞いておる」
「それは確かにそうですが……仮にも長たる貴方がそれで宜しいんですか?」
「轟くん程の実力者が来たのは予想外じゃったが、まあ麻帆良では日常茶飯事じゃよ。これ以上事を荒立てても、こちらもそちらも不利益しか生まんじゃろうて」

が、学園長先生が若干真面目な事を言ってる。

「それに対轟くん戦の映像を送りつけた時の、九条のじじいの反応と言ったら……フォッフォッフォッ、思わずニヤニヤ顔になってしもうたわい。さすがは裕香、ワシの孫候補は格が違ったのう」
「私怨を混ぜ込まないで下さい私怨を………ん? 孫候補!?」

やっぱり学園長先生は学園長先生だった! って、反応するのそこなんだね九条さん。この手の話題は結構聞くけど、本人達がどれくらい本気で言ってるのか全然分からない。

「そして、俺がじいちゃんの孫になった暁には見事学園長に就任し―――」
「一年も経たない内に麻帆良の歴史が幕を閉じるんだよね、先生」
「アーキーラー!」

だからおべんと付いたままだってば先生。あの朝霧先生が学園長先生になるんだよ? どうせ体操着はブルマにするとか、スカートの下のジャージ禁止(スパッツは可)とか変な校則作りそうだし。絶対、変な方向で麻帆良がおかしくなると思う。

「フォッフォッフォッ、心配せんでも、裕香みたいな若いもんが学園長になる事はありえないから大丈夫じゃよ。さて、それじゃあわしは鉄火巻きを貪る作業に―――ば、馬鹿な! わ、わしは間違いなく鉄火巻きを掴んでいた筈なのに……かっぱ巻きになっておるじゃとぉ!?」
「すりかえておいたのさ!」

……今の学園長先生でも不安に感じてしまってても、私は間違ってないと思う。というか普通に食べよう普通に。

「ふふっ、ここは楽しくて良い所だな」
「えー、まあ、楽しいとは私も思います」

学園都市の名は伊達じゃないって感じで、麻帆良の各地で自重してる人なんてほとんど居ないと思うし。皆、それぞれ自分が楽しめる事を精一杯楽しんでる。少し、ハメを外しすぎてる所もあるけど。

「良い事思いついた! 雪さん麻帆良においでよ、学生として」
「おい、来る来ない以前にどうして学生なんだよ、私は26だと言ってるだろ」
「じゃあ、先生?」
「教員免許なんて持ってない。それに仮にも九条の頭代行なんだから、軽々しくそんな事出来る訳ないだろ」
「辞めちまえYO!」
「辞めれるか!」

朝霧先生も九条さんのそんなやり取りを眺めつつ、何食わぬ顔でお寿司を食べて食べて食べる。お寿司を食べた後のお茶を飲むのも楽しみの一つ。……ふう。








大量にあったお寿司も河童巻き(不人気)を残して完食、大変美味しゅうございました。食べきれないかも、何て言ってたけど河童巻き以外は見事全滅、お寿司の力は凄い。私の中の九条さん株が急激に上昇。

「よし、この河童巻きは残念無念な朝倉にプレゼントしよう」
「うわぁ……」

渡されたらどうリアクションしていいのかわからないよね、これ。河童巻きオンリーは凄くきついと思う、量も結構あるから飽きが来た時に困る。

「……ふう」
「……ふう」

お寿司で上がったテンションが落ち着いて、珍しく朝霧先生が淹れてくれたお茶を飲んで一息。学園長室に来る事なんて数えるくらいしかなかったけど、意外とくつろげたり。ソファーがふかふかで羨ましい。

「なあ、裕香」
「はっ! 何でありますか!」
「その子、アキラちゃんで良かったな? 弟子とか言っていたけど」
「アキラであります、優秀過ぎる自慢の弟子であります」

こういう風に持ち上げられるとちょっと恥ずかしい。朝霧先生や刹那さんは、才能があるとか飲み込みが早いって褒めてくれるけど、実際の所自分ではどうなのかよくわからない。
まだ簡単な結界術とか初級の治癒魔法とか魔法の射手しか使えないし……や、他にも覚えてみたい魔法とかあるんだけど、今はこの二種類の魔法の熟練度を上げる事が優先だって言われてるから、こっちに専念してるだけなんだけど。

「特に気の扱いにおいては、見てたこっちがパニクッてしまった程の才能が! 身体強化した時のパワーと言ったらもう、人外にだって引けを取らないぜよ」
「ちょ、先生! 人外って何、人外って!」
「いいじゃないか人外。アキラもその内「早く人間を辞めたーい!」って叫びたくなるぞ!」
「ならないよ!」

人間になりたいじゃなくて、辞めたいとか……確かに普通の人からみたら人外染みてるかもしれないけど、それは魔法関係の人のほとんどに当てはまる訳で。

「人外はいいぞぉ。今人外になると、パイパンになれるぜ!」
「なれなくてもいいよ! なって何になるの!」

くぅ、また主導権を握られてるよ。この呼吸をするみたいにセクハラ発言するの本当に止めて欲しい。
学園長先生と九条さんなら良識のある大人として、このすけべ朝霧先生を止めてくれるんじゃ、と淡い期待を胸に視線を送ったら。

「パイパンになれるよ」
「パイパンになれるぞい!」
「じいちゃんパイパンだったの!?」
「学園長殿は人外だったんですかっ!?」
「人外っちゅうのは嘘じゃがほれ、こんな容姿をしてるとよく妖怪の類と間違われてのう」
「もうちょっと後頭部を伸ばして角とか生やしたら、フリーザ様(後頭部)になれるよじいちゃん!」
「紫色が足りない」

同類だった、迂闊だったよ忘れてたよ。九条さん、あの時もパイパントークしてたし、学園長先生も基本的には朝霧先生寄りの人だもんね。……おまけに知りたくない事を知っちゃった、忘れたい。何この学園長室。

「変態ばっかりだよ……」
「変態じゃないよ紳士だよ」
「淑女だよ」
「お師じゃよ」
「お師、もうすぐあなたの聖帝十字稜は」
「消毒せねばならんな」

どうしてそんなに息ピッタリなの? これが噂の頭痛が痛い状態、思わず額を押さえてしまう。
九条さんも自重出来ないタイプの人だったのを忘れてた、私が悪いのかもしれないけど。茶々丸さんと朝霧先生に弄られてる時のエヴァさんも、こういう気持ちだったのかなぁ。

「しかし、裕香が弟子を取る時代が来るとは思わなかったよ」
「成り行きと言うか事故というか、先生の足元がお留守過ぎた結果、みたいな感じですけど」
「裕香は詰めが甘いからのう」

私に魔法を見られて以来、転移魔法を使う時は慎重になったよね先生。このかさんの件は聞いた話だと、タマの時に喋ったのを聞かれたかららしいけど、それも何だか朝霧先生らしい。
そういえば、九条さんは昔の朝霧先生がどんな子だったのか知ってるんだったよね。

「昔は無愛想だったって聞いてたんですけど」
「確かに無愛想だったよ、んーエ○カ様って言えばわかりやすいと思う」

「……別に」とか言ってる朝霧先生か、あんまり想像出来ない。これもやっぱり普段の行いだよね。
もう一人昔の朝霧先生の事を知っているっぽい人がいるけど、あの人は何だか肝心な所を話してくれないイメージがあるから、あんまり期待出来ないかも。

「ああ、そうだ。今日は裕香にプレゼントが」
「胸叩き券でありますか!」
「セクハラは本当に自重しよう?」

大体、胸叩き券って……ああ、きっとタマでやるつもりなんだ。
そうこうしてる内に、九条さんがポケットから何かを取り出したみたい。これは鈴の付いた首輪? でもタマのサイズには合わない様な。

「じっとしていてくれよ」

いつの間にか朝霧先生の隣に座って、お互い息がかかる位の距離に。ぼけっとしてた朝霧先生は我に返ると、そのまま九条さんの胸の谷間を凝視しながらされるがままになってる。だから見すぎだって。

「裕香調教ルートフラグが立ってしまったのう」
「何故に首輪なのか気になって仕方ない、もちろんおっぱいも気になる」
「何が似合うかと考えたその瞬間に浮かんできたのが首輪だった、胸の事は一々気にするな」

そもそもどうしてプレゼントを渡そうと思ったのかは、九条さん以外わからないと思うけど、付けられた首輪が案外似合ってる。首輪に付いた鈴を指で弾いてる朝霧先生を見てると、満更でもないみたいだけど、それでいいのかなぁ?

「少し、力を入れて造ったから、サイズもタマや最終形態に変身しても変わる様に出来てる」
「なるほど、雪さんの手作りでありましたか。これで、俺は伝説のホワイトキャットになれる訳ですね。アキラ―――不潔を届けに来たぜ」
「ほぼ毎日届けられてるから」

その分ちゃんとやり返してるけど(タマをもふって弄り回す的な意味で)。どうしてかわからないけど、タマ相手なら主導権が握り易い。刹那さんやこのかさんの影響かな? タマの反応が面白いからやめられない。

「大事にするのであります」
「ああ、大事にしてくれ」

茶々丸さん辺りが見たら凄い反応しそうだ。……この場に茶々丸さんとクウネルさんが居たら、きっとこんな程度じゃ済まなかったと思う。どう収拾を付けたらいいのかわからない事態とか、絶対に私の胃がストレスでマッハ。

「ふむん、アキラ。そろそろ良い時間だから先にエヴァんとこ行っててくんろ」

お茶を飲み終えた朝霧先生が視線だけ私に向けて、エヴァさんの所に行くよう促してくる。ん、そろそろ皆も集まってる頃だから丁度いいかな。

「朝霧先生は?」
「ここからはちょっと大人の時間になるのであります、いやらしい意味じゃなくて。あと朝倉に不潔と河童巻きを届ける作業があるから」

お仕事の話なんだろうね。もうちょっと九条さんとお話してみたかったけど、また機会あるよね。
というか朝倉がちょっと可哀想になってきちゃった。って、河童巻きはいいとしても不潔は届けたら駄目だって。

「んじゃ、いつも通りの感じで修練積んでね!」

言い終わるのと同時に私のおでこに手を置いて、転移魔法の発動。そういえば新しい脇、じゃなくて技を見せてくれるって言ってたけど、過度な期待はしないようにしとこ。……自爆関係の技じゃなかったらいいなぁ。




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